2009年9月30日 福田くみ子議員
発言通告に従い陳情第29号、陳情第30−1号、2号の不採択に反対する討論を行います。
まず初めに陳情第29号「所得税法第56条の廃止を国に求める意見書の提出を求める陳情について」です。
この不況のもとで、中小企業は大変な苦境に立たされています。地域で日夜奮闘する業者婦人は地域の雇用を支え街づくりに大きく貢献しています。ところが所得税法第56条のために労働に対する正当な報酬を得ることができずに苦しんでいます。議員の皆さんの周りにも夫婦で夜昼なく働き事業を営んでいても様々な理由から青色申告にできない個人事業主の方も多いのではないでしょうか。ひとたび、事業の中心である夫やそれを全面的に支える妻が病気や事故などで働けなくなると、休業補償も所得補償もない個人事業主はとたんに暮らしの見通しさえも立たなくなりかねません。
皆さんの中で、この問題は「青色申告にすれば問題ないこと」と捉えているとすれば、ぜひもう一度お考えいただきたいのです。
所得税法56条の最大の矛盾点は、中小零細企業や個人企業主の営業と雇用を守り家族従業員の給与を経費として認めないこと、すなわち、実際に働いている人間の正当な対価を税法上否定しているところにあります。
不採択に反対する理由の一点目は、所得税法56条の目的と「青色申告なら認める」という例外規定の間には、まったく整合性はない点です。青色申告制度というのは、一定の帳簿書類を備えつけ記帳をした者にたいし、税法上の各種の特典を与えようというもので、56条の例外として家族従業員の給与を必要経費に認めています。つまり、税務署が税務調査に入ったとき調査をスムーズに進めるために奨励してきたもので、特別控除や家族従業員の給与を経費に認めるなどの「特典」を付けたのです。
そもそも実際におこなわれた人間の労働について、当局が申告形式をもって、認めるとか認めないとか勝手に判断すること自体おかしな話ではないでしょうか。
2点目に、財務省は第56条の目的を意図的、脱法的な「所得分割」を防ぐためと説明していますが、「所得分割」と申告形式とはまったく別な問題です。
財務省によれば、所得税法56条の目的は中小企業が家族に給与を支払う形をとって意図的な「所得分割」をおこない、納税額を低くするのを防止することにあると言っています。しかし、意図的・脱法的な「所得分割」は、青色申告でもありうることです。もちろん、労働の実態がないのに家族に給料を支払ったことにするなど、あってはならないことです。しかし、所得税法56条は、こういう一部の意図的、脱法的な「所得分割」を防ぐために、実際にまじめに働いている家族の給与まで、すべてを否定してしまっているのです。
前近代的な家父長制度を継承し、男女平等社会に逆行する時代遅れの法律は一日も早く根本的に改めるべきです。
以上、所得税法56条の問題点について述べました。中小零細企業・個人事業主などの業者婦人は、地域を支える大切な人材です。元気で頑張ってもらわなくてはなりません。すでに多くの自治体が同主旨の意見書を提出しています。