2020年3月24日
原ちづる議員の討論
私は日本共産党宇都宮市議員団の原千鶴です。会派を代表して、議案第17号、第57号、および第58号の原案に反対する討論を行います。
まず議案第17号一般会計予算案です。本市令和2年度予算案大綱によると、経済情勢は雇用・所得環境の改善等により内需を中心に緩やかな回復基調が続いているとしていますがそれは本当でしょうか。3月9日に最新のGDP(2019年10~12月期)が発表されましたが、速報値よりさらに下方修正され、マイナス7、1%という衝撃の数値となりました。これは東日本大震災の影響を受けた2011年1~3月期のマイナス6,9%を上回る数字で、前回増税が行われた2014年4~6月期と同じです。前回は税率3%の引き上げでしたが、今回は2%。にもかかわらず前回と同じ数字に並んだということは、それだけ家計や経済に重大なダメージを与えているという証拠と考えます。
また台風第19号で本市は大きな被害を受けました。消費税増税プラス台風被害のダブルパンチで、生活がどんどん苦しくなっているという小規模事業者からの話をたくさんきいています。経済が回復しつつあるという見方に疑問を感じざるを得ない状況と、私は感じていますが、議員の皆さんいかがでしょうか。そしてここにきて、コロナウイルス対策が求められていくことも予想される中、無駄遣いは許さないという厳しい目で、検討いたしました。
予算案に戻ります。まずは昨年の台風19号の被害を受けて、総合的治水・雨水対策の推進に予算がとられていることは、期待したいと思います。
しかし相変わらずLRT事業に桁違いの予算、127億円余がつぎ込まれていることには、反対せざるを得ません。今までにももう何度も申し上げておりますが、そもそも市民合意がないもとで進んでいるということが問題です。唯一直接意見表明できる住民投票も行われることなく、市民の思いは無視されたままでスタートされてしまったLRT。さらに資材の値上がりや事業の遅れによる長期化などもあり、当初の412億で賄えるのでしょうか。そして来年度の予算には、JR駅西側の事業化に向けた調査業務委託や駅横断部調査負担金なども含まれます。西側計画もLRTありきで進むことは市民の望んでいる形ではなく、許されません。駅を東西にまたぐ計画も、お金ばかりかかって利便性が低いものです。現在のような経済状態の中、更なる市民への負担増はあり得ません。
次のような市民の願いが置き去りにされていることは、見過ごすことができません。
1点目に地域内交通を改善し、金額的な負担の軽減と行き先等自由度を高め使いやすいものにしていくこと。また「いきいき75」のバスカードの金額が倍の1万円になりました。素晴らしいことですが、実態との関係ではまだまだ上乗せが必要です。西川田駅・江曽島駅・鶴田駅のバリアフリー化も市民の切実な願いです。
2点目に高すぎる国民健康保険税の負担を軽減すること。中でも均等割りは、子どもが多い世帯ほど負担が重くなり子育て世代への大きな負担となっています。市独自の減免を考えるべきと主張します。
3点目に幼児教育無償化に伴う給食費の実費徴収の撤廃や、子ども医療費無償化の18歳までの拡大です。また小中学校の給食費の無償化も、望まれています。
4点目に子どもの虐待対策はまだまだ不十分と考えます。きめ細やかな対応には何よりも心理職等の専門の職員の思い切った増員が必須です。なお、児童相談所の設置に向けて取り組むべきと考えます。
5点目には、私たちが主張してきた中学校体育館への空調機器の設置が含まれたことは、生徒だけでなく、地域の皆さんにとっても大変嬉しいことと思います。小中学校のトイレの洋式化は校舎が18校、体育館が4校という予定でおおいに進めていただきたいと思いますが、完了してやっと50%を超えるというところです。トイレ問題は待ったなしです。更なるスピードアップが必要と考えます。
以上5点を挙げましたが、市民の暮らしに寄り添い、生活の向上のために、すでに市独自の取り組みとして積極的に行っている自治体もあります。宇都宮市でできない理由はありません。どこに重点をおいた予算にするかということではないでしょうか。
また一人1台のタブレットを配るGIGAスクール構想より、より少人数できめ細やかな対応を目指す教育や、自殺の割合が増えている10代~20代の若者が安心して過ごすことのできる青少年の居場所の整備などこそ、優先課題と考えます。
「子どもにとっての最善の教育を求める意見書」も出されるなど、子どもの教育において重要と考えている議員が多いことは大変心強く感じています。未来への投資の最たるものは、子どもたちの教育や、環境の整備ではないかということは、多くの議員の共通意識となりつつあると感じています。
LRTやそれに係るJR駅東口開発によるゼネコンやデベロッパーばかりがもうかる大型公共事業への偏りを是正し、ぜひ多くの市民の願いを叶え、子どもたちの未来づくりのために予算を潤沢に振り分けることこそ、「今を生きる・未来を生きる市民が豊かで幸せに生活できるまち」を実現する近道であるとの意見を述べて、第17号の反対の理由とします。
次に議案第57号宇都宮市子どもの家条例の制定について、議案第58号宇都宮市放課後児童健全育成事業の設備及び運営に関する基準を定める条例の一部改訂に反対する理由を述べます。
第57条ですが、運営主体を指定管理者とするにあたり、様々な問題が解決されていないままである点が反対の理由です。引き続き雇用を希望する指導員の雇用が努力義務にとどまっていること、指導員の移動について等、指導員や保護者の理解を得ていない部分があること、保護者や子どもたちの意見が運営側に直接届く仕組みが確立されていないことなどです。
第58号については、保育の質の底上げを図るためにも、支援員となる方が確実に、早期に研修を終えることができるよう、人的な支援を市が行うことなどが必要です。現状に合わせる形で規制緩和をダラダラと延長することは子どもたちの豊かな放課後を保障するという理念からも遠ざかり、納得できないと考えます。
指導員が安心して働けることが保護者の安心や信頼につながり、最終的には子どもたちの安心や安全につながるという観点からみると、反対の理由を理解していただける方は多いと期待します。
議員各位の良識あるご判断とご賛同を期待いたしまして、私の討論といたします。