2019年10月1日
天谷みえ子議員の討論
日本共産党の天谷美恵子です。私は議案第99号と第100号、第111号について日本共産党宇都宮市議員団を代表して反対の討論を行います。
まず、議案第99号と第100号の幼児教育・保育の無償化に関する2つの条例案について一括して反対の理由を述べます。
本日10月1日から消費税が10%に増税されました。市民生活はますます大変になるのではと危惧しております。
反対の理由の第1に、幼児教育・保育の無償化の財源が消費税10%への増税分である点です。消費税は、低所得者ほど重くのしかかる逆進性を持つ税です。これまで保育料は、所得に応じた負担となっており、保育料が免除されている住民税非課税のひとり親世帯などは「無償化」による恩恵はなく、消費税増税分だけが重くのしかかるだけです。
第2に「無償化」は、教育や子育て支援に対する切実な願いを逆手に取り、消費増税と引き換えに安倍政権によるトップダウンの無茶で未熟な制度です。
幼児教育・保育の無償化の一方で、3歳から5歳児の副食費(おかず代)は実費徴収となり、保育施設が徴収を行います。今でさえ、多忙を極める保育施設にさらなる事務負担がのしかかり、滞納があれば給食運営にすぐさま影響が出てきます。さらには、滞納した世帯への保育の提供も困難となってきます。保育の一環である給食の費用は公費で負担すべきです。県内でも大田原市や佐野市、全国的には100を超える自治体が、法律の不備を補って独自の補助を行うことを決めました。国の無償化によって本市の負担減となる約8億円は、副食費の補助に回すべきです。厚労省でも5月30日の自治体向け説明会で「無償化」によって不要となる自治体独自の軽減財源も活用し副食材料費の負担増への対応を求めています。
第3に連携施設の基準の緩和は、連携施設のそもそもの意義を損なうものです。家庭的保育事業や小規模保育事業は、3歳未満児が対象であり職員も少ないため、3歳以降の保育の受け皿を提供することと、代替え保育の提供などを目的に、保育所、幼稚園、認定こども園など一定の規模の連携施設を設けることを義務付けていました。議案99号では、この連携施設を、小規模保育事業者でも可能とする基準の緩和です。
今回の無償化制度は、これまで認可保育所による自治体の保育実施義務に支えられた公的保育制度を大きく後退させるものです。
以上、議案99号、100号の反対の理由といたします。
次に、議案第111号平成30年度決算は認定できないとの理由について述べてまいります。
先ごろ発表されました議会調査資料によりますと本市の財政力指数は0.988で、30万人以上の中核市では第4位、自主財源は1279憶5281万円であり歳入総額に占める割合は59.8%で第9位、いわば普通預金ともいえる財政調整基金残高は175億5112万円で第5位、借金に当たる地方債現在高は市民一人当たり20万6,904円で少ないほうから第4位です。大変強い財政力であることをこれらの数字は示しております。この強い財政力を真に市民の切実な願いに沿って最大限有効に使われたかが問われています。
一方、国の政治はどうか。安倍政権のこの6年間を振り返れば、無謀きわまる消費税10%増税への暴走、日韓関係の悪化をはじめ八方ふさがりの外交、選挙の審判を無視した憲法改憲への暴走など内政も外交も行き詰まりはいよいよ深刻です。こうした安倍政治の下で市民の暮らしと景気の悪化は進み、実質賃金は7か月連続で前年同月を下回り、家計消費は冷え込みつづけています。深刻な格差社会が広がっており少子化にも歯止めがかかりません。子どもの貧困も社会問題化し虐待のニュースも後を絶ちません。大学生はアルバイトに追われ、多額の奨学金返済のために卒業と同時に借金を背負うことになります。地方自治体の役割はそのような政治の防波堤として住民福祉の向上に努めることです。残念ながら佐藤市政の平成30年度は安倍政権の数の力による暴走のようにLRT建設に血道を上げる余り住民福祉の向上に徹することを置き去りにしてきたと判断するものです。
さて、平成30年度決算の認定できない理由を具体的に述べてまいります。第1にLRT事業費で263憶3700万円余の予算に対し支出済額が101億3,300万円余です。特に土地購入費は36億7100万円余の予算に対し7億8500万円余の支出であり用地取得が進んでいない状況がうかがえます。住民合意のないまま進められてきていること、上下分離方式で財務状況の透明性に欠けること、さらに市民理解の促進と言いつつ湯水のように宣伝・広告に税金を費やしていること。また前提条件が余りにも違う富山市への体験見学会に526万円余を支出してきました。これらはすべて費用対効果上も市民の厳しい指摘があることなどの理由から認められません。
第2に地方創生や一億総活躍を謳っている下でも実際には大企業優遇で地に足のついた地域経済の活性化策が置き去りである点です。決算では中小企業対策費は昨年度より4400万円伸びて1億1910万円余になったことは大いに評価いたします。しかしまだまだ十分とは言えません。商店街振興費は総額でも3560万円余であり、市街地の活性化は図られていません。一方で企業誘致定着促進費は5億6,558万円余であり予算額1億8386万円余の3倍にもなっております。アベノミクスの恩恵の届かない中小企業や地元に根差した個人事業主にこそ手厚い自治体からの支援が必要ではないでしょうか。大手地区開発事業費14億741万円余はマンション建設が主であり民間に任せるべき事業であると思われます。また駅東口整備費として1700万円余が支出されていますが、ゼネコン・デベロッパー奉仕に道を開く公共事業であり認められません。
第3の理由として交通対策費は余りにも不十分であると指摘します。地域内交通15路線に1億1949万円余、生活バス路線維持費補助金46路線に5257万円余、公共交通利用促進費2853万円余を合わせても1億9千万円余です。東西で1,000億円にも上る税金が投入されるLRTでは解決できないバス路線の再編や高すぎるバス料金の課題、矛盾が顕在化している地域内交通や高齢者の免許返納促進策等の課題も他の自治体と比べても圧倒的に遅れた状況のまま手つかずです。
第4に職員削減ありきの行きすぎた行革は、日常的な市民サービスの低下ばかりか災害時の危機管理体制にも重大な懸念をもつ点です。本市の市民1000人当たりの職員数は、5.64人で少ない方から8番目、平均は6.31人ですから0.67人も少ない状況です。とりわけ教育相談員、消費生活相談員、DV支援相談員、子ども発達支援センターの専門家体制は高い専門性と経験が求められている上、年々相談件数が増加の一途をたどっています。処遇改善と人員増は喫緊の課題であるにもかかわらず置き去りにされています。消防隊員、保健師、図書館司書、生活保護ケースワーカーの専門職の人員不足は常態化しています。
第5にここ数年の猛暑への熱中症対策も不十分です。学校トイレの洋式化も遅れています。以上反対の理由の主なものを具体的に挙げてまいりました。深刻な格差社会から市民の暮らしや雇用を守ることこそ地域経済を活性化していく基盤です。税金の使い方はLRT建設に血道を上げるあまり優先順位を誤ってきたと指摘し、新年度予算編成に当たっては、「市民こそ主人公」の立場から大胆に見直しを行うことを求めるものです。
以上をもちまして私の討論を終わります。議員の皆様の良識ある判断を期待いたします。