2018年10月2日
福田くみ子議員の討論
日本共産党の福田くみ子です。私は日本共産党宇都宮市議員団を代表して、議案第100号平成29年度決算は認定できないとの理由について述べてまいります。
まず、H29年度の本市の財政指標を見てみます。30万人以上の中核市の速報値では、本市の財政力指数は0,985で、地方交付税交付団体とはいえ第3位、自主財源比率は62,6%で第3位、いわば普通預金ともいえる財政調整基金残高は152億円で第8位、借金にあたる地方債残高は一人当たり21万3325円で少ない方から第4位と、大変強い財政力であることを示しています。この強い財政力を真に市民の切実な願いに沿って、最大限有効に使われたかが問われます。
一方国の政治はどうか。安倍政権のこの5年間は、とりわけ憲法を踏みにじって数の力で成立させた安保法制以来、権力を振りかざすなりふり構わぬ暴走を続けています。うそや隠ぺい、改ざんがまかりとおり、とうに破綻が明瞭になっているアベノミクスに未だにしがみつく政権は、その恩恵にあずかれない99%の国民を顧みません。そして、深刻な格差社会を広げ続けていることに何の反省もありません。
歯止めのかからない少子化、結婚しない若者、アルバイトに追われる大学生、子どもの貧困・虐待、DV、障がい者への差別や偏見など、こうした閉塞感を覚える様々な社会問題の根っこには、深刻な格差社会があるのではないでしょうか。
地方自治体の本旨は、そのような政治の防波堤として住民福祉の向上に努めることです。
残念ながら、佐藤市政の29年度は、安倍政権の数の力による暴走のように、LRT建設に血道をあげるあまり、住民福祉の向上に徹することを置き去りにしてきたと判断するものです。
さて、29年度決算の認定できない理由を具体的に述べてまいります。
真に市民の願いに沿って使われたと言えない最たるものは、LRT整備推進費7億9042万円余です。住民合意もないこと、上下分離方式で財務状況の透明性に欠けること、減価償却費が計上されない仕組みの中では事業の継続性の担保も見えない事業であること、さらに前提条件のあまりに違う富山市への見学会は無駄であること、などの理由から認められません。また、同様に住民合意のないスマートインターチェンジ負担金も認められません。
第2に地方創生や一億総活躍の名のもとでも、実際には大企業優遇で地に足のついた地域経済の活性化策が置き去りである点です。
決算を見てみると、中小企業対策費はわずか7,511万円で昨年比1,009万円の減、魅力ある商店街等補助金1,757万円など商店街振興費は総額でも3738万円余で雀の涙です。一方、効果の検証も明確でない企業誘致定着促進費は22億2310万円で、前年比2,54倍と大盤振る舞いです。すでに破たんしたトリクルダウンに未だにしがみつく経済対策は、時代遅れと言わざるを得ません。アベノミクスの恩恵の届かない中小企業や、地元に根差した個人事業主にこそ手厚い自治体の支援が必要です。
2000名規模のコンベンション施設を中核とした時代遅れの箱モノづくりとLRT建設がセットのJR宇都宮駅東口整備費2859万円余は、ゼネコン奉仕の公共事業であり、見直すべきです。
大手地区再開発事業費18億7795万円余は、マンション建設が主であり民間に任せるべき事業ではありませんか。大企業が行う事業に莫大な税金が投入されるのは認められません。
市民にとって切実で重要な事業は、拡充が求められているにも関わらず、すすまず、削減・縮小されている点は見過ごせません。
そこで第3の理由として交通対策費は、あまりに不十分であると指摘します。地域内交通、15路線に8666万円余、公共交通利用促進費8151万円余、合わせてもわずか1億6000万円余です。東西で1000億円にも上る税金が投入されるLRTでは解決できない、バス路線の再編や高すぎるバス料金の課題、矛盾が顕在化している地域内交通や高齢者の免許返納促進策等の課題も、他自治体と比べても圧倒的に遅れた状況のまま手つかずです。階層性のある交通体系は、いつになっても見えてきません。
第4に職員削減ありきの行き過ぎた行革は、日常的な市民サービスの低下ばかりか、災害時の危機管理体制にも重大な懸念を持つ点です。人口30万人以上の中核市決算状況調査速報値では、本市の市民千人当たりの職員数は、昨年度から0,01人減の5,62人で少ない方から9番目。平均は6,24人ですから0,62人も少なく、毎年じりじりと削減を進めています。
とりわけ教育相談員、消費生活相談員、DV支援相談員、子ども発達センターの専門家体制は高い専門性と経験が求められているうえ、年々相談件数が増加の一途をたどっています。処遇改善と人員増は喫緊の課題であるにもかかわらず置き去りです。消防職員、保健師、図書館司書、生活保護ケースワーカーの専門職の人員不足は常態化しています。
第5に河内、上河内地域自治センターの統廃合、機能低下について指摘します。河内、上河内のそれぞれの自治センターが地区市民センターになり、上河内では保健センターが消え、保健と福祉の窓口は、河内地区センターに統合され、職員体制は34名から10名に減りました。包括ケアシステムを推進する地域の拠点として、全市のモデルにすべき場所ではなかったでしょうか。まさに地域の切り捨てです。
以上、反対の理由の主なものを具体的にあげてまいりました。
深刻な格差社会から市民のくらしや雇用を守ることこそ、地域経済を活性化していく基盤です。H29年度の税金の使い方は、LRT建設に血道をあげるあまり、優先順位を誤ってきたと指摘してH29年度決算認定は認められない立場からの討論といたします。議員のみなさまの良識あるご判断を期待いたします。