平成29年9月29日
福田くみ子議員の討論
日本共産党の福田久美子です。日本共産党を代表して、議案第111号決算の認定について反対の討論を行います。
地方自治体の一番の役割は、住民福祉の向上にあります。歳入決算額3111億円余、歳出決算額3068億円余の市民の大切な血税が、最大限効果的に使われたか、残念ながら検証の結果は認められないとの結論です。
まず、決算状況の評価ですが、中核市における財務指標の速報値によれば、財政力指数は0.975で42市中第3位、自主財源比率62.1%で4位、経常収支比率92.9%で24位、自主財源比率は62.1%で4位、義務的経費比率は49.2%で10位、地方債残高12位と主な指標は、大変強い財政力を示しています。
私は、平成28年度の予算についての討論の中で、当時の経済状況について、政府からは景気回復を示す様々な数字が出されてもそれが全く実感されないのは、実質賃金の4年連続のマイナス、個人消費の落ち込み、消費税8%増税の影響を指摘しました。このような中で、身近な暮らしを支える保育や教育、医療や介護、地域経済を支える施策にこそもっと予算をまわすべきだと主張しました。
また、自民党政治の深刻な行きづまりの中で、民意無視の強権政治は、市民生活の将来不安を増大させてきました。昨年夏の参院選、それに続く知事選・市長選に見られた市民運動の広がりは、有権者に「この国は一体どこに行ってしまうのか」という不安や不満が噴出したものです。市長選挙では佐藤市長もまさに崖っぷちを経験されたわけですが、そこから学ぶべきことは、安倍首相も大好きな「丁寧な説明」という名の一方的な説明の連発ではなく、市民の声にしっかり耳を傾けることだったのではないでしょうか。地方自治体の最大の役割を脇に置き、LRTありきの大暴走はやめてそろそろ目を覚ましてほしいと改めて訴えるものです。
前置きが長くなりましたが、3つの点に焦点を当て反対の理由を述べます。
第1に、優先的・重点的に取り組んだとしているLRT整備についてです。
平成6年から28年までのLRT関連経費は総額で26億5532万円余となりました。この間賛否が二分してきたにもかかわらず、事業に関する民意を一度も問うことはなく大暴走を続けてきました。平成28年度は、91億2309万円余もの当初予算を組みながら、決算額は12億4564万円余、減額補正は83億8,610万円余にも上ります。大企業や大手ゼネコン・デベロッパーばかりが儲かり、大多数の市民には負担ばかりがのしかかるLRT事業には大義がないことは、83%も減額補正せざるをえなかったことからも明らかです。
市長選挙を辛うじてくぐり抜けたことをもって、市民はすべてを市長に白紙委任したわけではありません。
人口減少時代に対応するネットワーク型コンパクトシティ形成に不可欠な仕組みとの説明は、理解されたと言い切れるのか、むしろ新たな開発競争に道を開くまやかしの仕掛けと言えるのではないでしょうか。コンパクトな街に作り変えるために、過半数の市民が必要ないと言っているような、しかも赤字が心配されるような事業に莫大なインフラ投資をするのは、筋違いです。
高齢者の交通事故が急増する中で、公共交通の充実は一刻を争う喫緊の課題です。共産党でも強く推進を要望してきたデマンド・タクシーなどの生活交通は、地域内交通運行事業として12地区13路線で実施され、多くの市民の生活交通を支える事業となっています。しかし、補助金はわずか7,634万円余。自治会負担、個人の登録料、利用料など3重の負担はやめて、思い切って市が全額負担してもその費用対効果は絶大です。
また、高齢化社会などに対応する公共交通の充実を言うのなら、すぐにでもできる高齢者専用バスカード「いきいき70」の拡充になぜ取り組まないのか。昨年度には、25,137人が購入し補助金は8,120万円余です。年間わずか5000円分のバスカードでは、清原からでは、4回往復したらなくなります。この2つの事業合わせても決算額はわずか1億5千万円余です。高齢化社会到来に備えた公共交通の充実への本気度は感じられません。
2点目は、マンパワーの問題です。昨年の決算の賛成討論の中で、「今後の行政運営を考える上で、市民協同、災害対策、市民目線での行政運営や行政運営や事業ノウハウの継承などを考えれば、適正な職員数を確保し、自ら事業を行う体制が重要になってくる」との指摘がありました。賛否の結論は分かれますが、同様の見解であることに確信を持つものです。昨年度の市民1,000人当たりの職員数は5,63人で中核市中少ない方から13位、毎年じりじりと減り続けています。ちなみに平均は6,21人です。
日本共産党は、マンパワーの強化について、機会あるごとに取り上げてきました。とりわけ、大災害がいつ起こってもおかしくない状況の中、市民の命と財産を守る先頭に立つ消防職員の配置は、国の指針の8割にも満たない状況が置き去りになっています。そのほか、地域包括ケアシステムの担いとなりうる保健師や最後のセーフティネットを担う生活保護ケースワーカーの増員、消費生活相談員や非正規学校職員の待遇改善など、不十分である指摘します。
3点目に、命を守る砦となっている国民健康保険特別会計についてです。アメリカでは国民皆保険制度の賛否が政権を揺るがす議論となり、オバマケァと呼ばれる制度はトランプ大統領の登場でも簡単には廃止となることはないようです。国民健康保険は日本の誇るべき皆保険制度であり、重要な社会保障の一つです。
昨年度の国保税収納率は、様々な収納対策が講じられている中でも71%と微減です。3割近い滞納者のうち所得なしは44,1%、200万円以下はなんと82,7%を占めています。資格証明書の発行は3,055件、短期被保険者証は3,235件に上ります。
全日本民医連では、受診抑制で亡くなった事例を調査しています。昨年度は28都道府県から58件の報告があったと発表、すべての医療機関で考えれば氷山の一角にすぎないとしています。その6割が無保険や資格証明書、短期保険証で受診が遅れたとのことです。
市民のいのちや健康を守るべき制度が、制裁措置によって受診抑制が広がり、健康破壊と生活不安を引きおこし、重大な人権侵害を起こしかねないことを肝に銘じるべきです。
ペナルティを課す収納対策ではなく、高すぎる国保税をいかに1円でも引き下げるか、豊かな財政力に見合った温かな福祉の心をこういうところでこそ発揮すべきだと指摘します。
以上、3つの点から決算における反対の理由を述べてまいりました。議員各位の良識あるご賛同を心よりお願いいたしまして討論を終ります。