平成29年9月29日



荒川つねお議員の討論



私は、発言通告に基づき、ただ今、議題となっています陳情第54号と56号の不採択に反対の討論を行います。

 この2つの陳情は、議案第110号・軌道敷設工事施行認可申請に係る道路管理者の意見に関する議案を否決することを願うものとなっています。

議案第110号は、「軌道法」に基づく「工事施行」の認可申請に伴い、栃木県知事から軌道が敷設される道路の道路管理者の意見を求められるため、道路管理者である市長として、同意する旨の回答をしようとするものです。また、この工事施行認可は、軌道の位置や構造等が安全上あるいは利用者の便益を図る上で適当であるかどうか、軌道建設規定の定める基準等に合致するかどうか等の技術上の審査が行われるものとされています。

この議案第110号が、もし可決となると国による軌道敷設工事施行認可を受けて、軌道工事の施行が可能となります。

しかし、圧倒的な多くの市民は、本議会での議案第110号の可決により、LRT工事着工に道を開くことなど望んではいません。

日本共産党宇都宮市議員団は、陳情団体・陳情者を始め、本市のLRT建設計画に反対・疑問の声を総結集し、拙速で性急な手続きを急ぐべきでないことを、市長及び執行部、議員の皆さんに訴えるものです。

そこで、第1に、市民合意について、本市には「特に重要な事項については、直接住民の意思を確認するために、「住民投票」の実施を行うとする、宇都宮市自治基本条例があります。これを三度とも拒んだ市長や議員の皆さんに問いたい。この期に及べば、LRT事業が少なくとも過半数の市民合意を得ているという客観的担保を、市民に、国に、県に示す時ではないのか。もし、示せないのなら、市長選挙の出口調査結果であるLRTには反対、62%の民意を素直に受け入れ、国に対して、この様なことで、市民合意が大前提の国の巨額補助金を受け取っていいのかどうかを確認し、市民に報告すべきです。この事業の最大の弱点である市民合意形成に全力を尽くし、見るべき結果を示してからでも工事施行認可申請は遅くはありません。

市民合意なきLRT推進は何を示すのか、宇都宮市のLRT建設事業マイナス市民合意イコール大企業・ゼネコン・デベロッパー等の利益のためであると改めて指摘したいと思います。

 第2に、本市のLRT導入計画は、桜通り十文字付近からテクノポリスまでの、東西一直線15kmのルート先にありきです。県都うつのみやのまちづくりとの整合性は、最初からありませんでした。もし、狭い大通りにLRTを通すのであれば、先行してモビリティマネジメントの計画と推進が必須でしたが、車との共存施策に終始してきました。最近になって、いわゆるNCC構想なるものを持ち出してきましたが、LRT先にありきのLRT導入計画との整合性は全く無縁と言わざるを得ません。例えば人口密集地の宇大周辺や北関東最大の住宅団地、清原台などが、コースから外れているのを見れば一目瞭然ではないでしょうか。

現在と未来の市民のためには、大企業・ゼネコン・デベロッパーひも付きのシンクタンクや、御用学者の蠢動する現計画を廃棄し、県都うつのみやのまちづくりと公共交通政策を計画段階から住民参加で構築することこそ、最も利益にかなうものではないでしょうか。

第3に、本市のLRT導入は、国交省肝いりの全国初の軌道全線敷設計画です。本来なら、他市のお手本となる事業推進が求められる所です。しかし実態は、法の受け道をLRTが走るがごとくのムリ筋が何本も何本も市民の皆さんの前にはっきり見えてきていることです。

例えば、市長は、LRT建設による市民負担は、年あたり最大で13億円(20年間)増税や新たな負担はありませんと言ってきました。私は、先の一般質問で、LRTを導入すれば、会計の形はともかく、新たな負担は年10億円以上生まれると指摘しました。

本市のLRT導入計画は、芳賀町分を含めて、全長約18kmもの軌道を走る公営企業でありながら、全国の鉄道・軌道会社のうち、2社を除く全ての企業で当然のこととして行っている、減価償却費を計上していません。その点では、橋梁や道路をつくると同じ公共事業扱いとし、維持・修繕・再投資の費用は、一般会計からその都度支出することで運営してゆくとしています。このやり方については、国会での審議で、地方公営企業法等の脱法的行為に近いとの指摘がされています。これは国交省が編み出した、公設民営型上下分離方式であることを隠れ蓑にして、市民への赤字隠し、市民負担隠し、ひいては、事業に対する透明性と事業継続の保障をないがしろにするものです。私たちは、こうしたままでLRT着工にお墨付きをあたえることなど許すわけにはいきません。

また、減価償却費等に見合う少なくとも年10億円以上の新たな市民負担については、宇都宮市民・芳賀町民が担う覚悟が求められます。その説明・合意は、着工前に市長がなさねばならぬ責任であることを指摘しておきます。

第2の脱法的手法が、LRT計画と平石中央小学校の子どもたちの安全を守ることを巡って鮮明となっています。

今回の議案第110号の内、市道6413号線は、地権者を無視して土地や家屋の上を勝手に線引きした架空道路を市道認定しました。その道路にLRTを走らせるので、これは併用軌道です。だから、1日、2万台走行すると言われている辰街道と敷地の一部まで削られる平石中央小学校の交差点は、遮断機もつけない平面交差点でよしと言って市長は譲りません。しかし、市道6413号線は、明らかに新設のLRT専用軌道であり、鉄道技術基準省令等の安全対策を最重要視し、「道路と平面交差をしてはならない」を遵守・採用すべきなのです。

ここにも子どもたちや住民の生命と生活を軽視するムリ筋が表れているのではないでしょうか。

陳情者らは、東西基幹公共交通としながら、JR宇都宮駅西側整備や事業費の全容を、市民の明らかにできないままの、駅東側強行の理不尽性、需要予測算出の市民への不透明な対応、朝の通勤時間帯に定員の2/3の乗客が30分も立ったままの通勤ラッシュを選択するのだろうかの疑問、1日、わずか8000人(片道)の乗客のために500億円もかける費用対効果の問題等々を指摘しています。

日本共産党宇都宮市議員団は、陳情者らの議案第110号の是非を単なる法令上技術上の審査に抑制されない陳情趣旨を支持します。

本市のLRT導入事業は、以上の指摘の通り、様々な問題・課題が重なっており、これからもまだまだ山あり谷ありの事態が続くことでしょう。

日本共産党宇都宮市議員団は、市民こそ主人公、市民の利益を第一に政治姿勢を貫き今後も真摯に向き合ってゆく決意を表明し討論を終ります。

議員各位のご賛同を宜しくお願いします。




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