2016年12月26日
荒川つねお議員の討論
私は、市議会日本共産党を代表して、陳情第33号・第34号について不採択に反対の討論を行います。
まず、「LRT導入計画の白紙撤回」に関する陳情についてです。
私は、陳情趣旨に見られるバス路線偏重からの市長選挙評価等については、全面的に賛同するものではありません。しかし、この度の市長選挙の歴史的結果を受けて、「LRTありきの計画を白紙に戻して、将来の宇都宮市に相応しい公共交通政策を原点から検討しなおしてほしい」との陳情事項には、全面的に賛同を表明するものです。
今回の市長選挙では、盤・盤・盤石な支援組織体制に乗り、3期12年、豊かな実績を誇る現職佐藤市長に対して、新人・金子とおる氏がわずか2ヶ月前に、「LRTストップ、まだ間に合う」「LRTの是非を問う、ラストチャンス」と敢然と立ちあがり、「LRTよりも医療・福祉・教育の充実を」との訴えが多くの市民の心をとらえました。市政のカジ取りは引き続き佐藤市長に委ねられました。しかし、市政の最大課題であるLRT建設計画では、出口調査による客観的結果で明らかなように、市民の審判は「LRT建設ノー」が多数となりました。本市のLRT建設計画は、未だ市民合意に到っていないことは、何人をしても認めざるを得ないことは明らかではないでしょうか。
これまで、宇都宮市の憲法というべき自治基本条例に基づいたLRT建設計画の是非を問う住民投票は、再三にわたり佐藤市長と市議会の議決で拒否されてきました。しかし、市民が今回の市長選挙で示した投票参画は、選挙結果のみに押しつぶされず、市民こそが市政の主人公としての新しい自覚を大きく育てる結果と変化を生みだしています。
私たち議会人は、LRT是非の違いを超えて、市長選挙を通した主権者たる市民の変化を大いに喜び、歓迎すべきと思いますが、いかがでしょうか。
さて、今度の定例議会では、選挙結果についての見解を求める質問が際立ちました。特に、LRT推進の市長支持の議員の皆さん方は、こぞって市長を激励し、持ち上げ、新人の金子氏が僅差まで迫ったことについて、根拠のない情報・誤った情報に市民が混乱させられた結果とする発言が相次ぎました。市長も根拠のない不正確な情報により本質が隠された事と答弁しています。
しかし、市民はちゃんと見ています。示された民意を歪めることは大問題です。大体、これまで、全戸配布の市広報紙を始め、ありとあらゆる手段を用いてくり返し、くり返しLRT説明・宣伝を展開してきたではありませんか。それが選挙戦で相手陣営の一片のちらしに吹き飛ばされてしまう様な軽いものだった筈がないでしょう。
選挙結果は、お互いに厳粛に受け止め、市民と真正面から向き合う真摯な姿勢こそ今、求められているのではないでしょうか。
今回の市長選挙におけるLRT問題での市民の審判の本質について、福田久美子議員が質問の中で解明しています。説明を聞けば聞くほど疑問が大きくなる。また、明らかになればなるほど市民利益と矛盾する事業であることを市民は見抜いたと指摘してます。
例えば、52万市民の内一日僅か8000人足らずの利用のために、関連事業費を含めて500億円もの税金等を使うことが適切なのか、スプロール化した市街地に東西わずか15kmの一直線のLRTのみで、ネットワーク型コンパクトシティの都市装置になり得るのか。宇大周辺や清原台など市民の生活の中を通さずして、一体誰のためのLRTなのか。いつになっても示せるのに示さない総事業費と市民負担の全容は等々です。
昨日からの下野新聞吉田副市長インタビュー記事にもあきれました。LRTバラ色論と我田引水で推進に都合の良い情報の一方的なたれ流しだけでいいのでしょうか。市民は国交省ばりにムダな公共事業費に国民の税金を湯水のように使う側ではなく、一生懸命働いて血の出る様な税金を納める側に立った、等身大のLRTの説明を求めていることを理解すべきであります。
いずれにしても市長選挙結果を経て、LRTの年度内着工が先送りとなりましたが、大部分の市民は、着工を急ぐことなど望んでいません。
佐藤市長は、福田くみ子議員との質問戦で、LRTを死にものぐるいで推進すると言明しました。その気迫でまずは、LRT事業の本質問題について解明・丁寧な説明に徹していただきたい。その上で、民主政治の常道に照らして市民多数の合意形成を達成してから着工へ進むことを求めます。
今回の市長選挙で示されたLRT推進ノーの市民の民意を変えることができるのは、佐藤市長自らが住民投票を提案し、市民合意を証明することであります。
議会は、選挙に示された民意を尊重したこの陳情採択が望ましいことを訴えてこの陳情の討論を終ります。
次に、陳情第34号河内図書館への指定管理者制度導入継続を見直し、直営に戻す予算措置を求める陳情の不採択に反対の討論を行います。
本市では、現在の5館の市立図書館の内、南図書館と河内図書館に指定管理者制度が導入されています。今議会にこれまでの3年間から更新し平成29年度より5年間の河内図書館の指定管理者の指定が議案となっています。
市民にとって図書館とは、人類の叡智の宝庫であり、安らぎと交流・情報発信の場です。また、図書館は人が育つ場であり、常に充実・発展が求められています。図書館は全ての市民の学習を保障する機関として、無料利用の原則が貫徹されています。
また、図書館法では、図書館の働きを、図書や雑誌、CDやDVD,絵画、その他の資料を収集し、利用者が使いやすいように工夫して無料で提供することともなっています。
指定管理者制度は、行革の手段として導入されたもので、コスト削減が強く求められます。事業者も3年から5年が契約期間で、長期のビジョンに基づく運営が困難となります。図書館は、自治体内の図書館との一元的な管理運営、他の自治体図書館との連携・協力を前提とした事業です。また、競争とは無縁の「地域の知の拠点」としての公共施設をして守るべき事業と言えます。
また、高い専門性が求められる図書館司書は、その経験の蓄積によって育成されるもので、雇用期間が限定せざるを得ない不安定雇用のもとでは専門性の蓄積も出来ません。河内図書館の指定管理者制度導入後の約2年半の退職者数等明らかにされず、検証は十分とは言えません。
日本共産党は、図書サービスの後退を許さず、地域の知の拠点としての機能と身近に使いやすい図書館を守り、市民・利用者の声が通り、生かされるためには、指定管理者制度は、とりわけ図書館にはなじまないと考えます。陳情者の直営に戻す要望はきわめて妥当であります。この陳情の採択を訴え討論を終ります。