2016.9.27 荒川議員の討論
日本共産党の荒川恒男です。
私は、発言通告に基づき、議案第114号、平成27年度一般会計及び特別会計決算の認定について反対の討論を行います。
まず、平成27年度の決算状況について議会事務局作成の財務資料を見てみます。
財政力指数は、中核市44市中0.962で第3位。経常収支比率は、90.9%で27位。義務的経費比率は、48.1%で第10位です。
自主財源比率は63.8%で第3位。実質公債費比率は4.7%で良い方から10位です。
以上の数字にも表れている本市の豊かな財政力が、市民のくらしをしっかり支え、地方自治の本旨である「住民福祉の増進」に効果を発揮した決算となったのか否かです。
答は「ノー」であります。
その理由の第一は、本市の主たる施策であるLRT事業費です。平成27年度、当初及び補正予算・繰越事業費合計16億3900万円余となりましたが、ほぼ補正額である11億3000万円余が、事業進捗のめどが立たない等のため繰越明許費となりました。
ここには、国土交通省ひもつきの日本交通計画協会の引いた「LRT先にありき」と「市民合意形成軽視」のレールの上を大暴走する本市のLRT整備計画の実態と弱点が如実に表れています。今後ますます予算執行上の矛盾を市民の前にさらけ出すことになるでしょう。佐藤市長は、ゼネコン・デベロッパーの利益優先のLRT整備計画を大胆に見直すべきです。駅東地区の現計画は、その需要特性からしても500億も600億円にもなるLRTよりも、100数十億円で、同等以上の事業効果を生みだす、国交省においてもLRT同様に推奨している、BRTシステムに転換を図ることが、本市、最大の税金のムダ遣いを防ぐことになると確信しています。
日本共産党宇都宮市議員団は全市民の利益第一を貫く立場から、LRT整備計画のこの期に及んでも、全市民の皆さんと議員の皆さんに、これがBRTの車両の一つですがこのBRTシステムの対案を示し、市民のための公共交通、宇都宮のまちづくりにふさわしい公共交通のあり方を市民参加で検討しなおすことを心から訴えるものであります。
第2の理由は、市街地再開発事業です。30階建超高層マンション主体の大手地区再開発に49億円もの血税が投入されることになっており、平成27年度は6億6000万円余が投入されました。私は、このような超高層マンション建設は人口減少時代に時代遅れであり、
民間活力に任せるべきと言ってきました。本市の中心市街地エリアにおいて一部では限界集落が発生し、また空家の駐車場化が蔓延しているもとで、わずかなスポットに巨額の税金を注ぎこむ再開発よりも、既に、西欧先進国で取り組まれているように、市中心市街地全体を環境に配慮された再生を図り、老若男女世代が都市生活に回帰する真の活性化をめざすまちづくりにこそ税金は振り向けられるべきと考えます。この点からしても、若年世帯家賃補助制度はいかにも小手先の施策であり5800万余の決算額に対する費用対効果は乏しく、しかも、世代間公平を欠くものであり廃止すべきであります。
決算認定不可の第3の理由について述べます。
この10年間の市職員数の推移を見ますと 平成17年度3615名から平成27年度3296名へと319名減少し、非正規や民間委託に置き換えられてもきました。現業部門では長年培われてきた技術の継承もままならない事態も懸念されています。
自治体の仕事は、何よりも住民の暮らしを守り、福祉の増進にあると冒頭述べましたが、本市の豊かな財政力は、本年度決算においても、それに応えるものにはなっておりません。
とりわけ、優れたマンパワーの確保が不十分でした。保健事業と市民の健康づくり推進のための保健師の増員と医師の正規雇用、消費生活相談員の増員と待遇改善、市民が生活困窮に陥った時の最後の砦である生活保護行政の最前線を担うケースワーカーの国指針に基づく速やかな増員、新子ども子育て支援制度発足のもとでの保育士の確保と待遇改善、学校教職員では、約20%にのぼる非正規労働を改善し、日本と宇都宮の未来を託す人材育成を肝に銘じるべきです。また、近年予想を超える災害が次々と起きている中で、市民の生命・財産を守る中核を担う消防職員が国の指針の8割にも届いていない現状は由々しき事態ととらえるべきです。市長は、本市の重大なマンパワー不足を自覚すべきです。マンパワー強化の新年度予算措置を、声を大にして要望するものであります。
最後に、安倍自・公政権による社会保障解体路線のもと、市民生活は医療・介護等様々な分野で深刻な危機にさらされている状況はますます拍車がかかっています。
そこでとりわけ市民のいのちに直結している国民健康保険特別会計の1年はどうだったでしょうか。
毎年の全国日本民主医療機関連合会の調査によると、病気や不調をかかえていても経済的事情から病院にかかることを我慢し、早期に治療すれば助かっていた命が、手遅れとなり死亡に至る事例が後を絶ちません。
国民皆保険を下支えしているのが国保のはずですが、貧困と格差の広がりのもと、高すぎる国保税と患者負担の中で、本市では、
平成27年度、窓口10割負担の資格証発行世帯は3565件、短期保険証発行世帯が2432件にのぼりました。国保滞納世帯へのこのペナルティの主な理由としている収納率の向上には、ほとんど役立っていないことも明らかとなっています。
保険者である市長の仕事は、高すぎて払いきれない国保税の引き下げであり、国保税負担軽減を目的とした国の保険者支援金はこのために使うべきでした。
また、安心して使える医療制度を補完する目的をもって、病気になっても窓口負担が払えず、医者にかかれない市民のために、国保
法第44条があります。これは「特別な理由で一部負担金の支払いが困難な時は免除・減額の措置をとることができる」ことになっています。しかし、保険者である市長は、その適用をかたくなに拒んでいます。ないのはお金でなく、市民への思いやりではないのか。きびしく指摘しておきます。
また、保健事業においては、特定健診受診率・特定保健指導率が全国平均を大きく下回る地位に宇都宮市は平成27年度も甘んじています。その真の要因は、その対応施策において本市の財政力にふさわしい予算とマンパワーの強化を市長が保障していないことにあります。
以上、市長の3期12年、LRT偏重路線は、市民のいのち・くらしを守る分野において、国保事業にみられるがごとく、「一事が万事」の状況を生み出しています。
この市政のあり方の転換こそ、地方自治の本旨である、市民の福祉の増進の発展・成熟につながることを、声を大にして訴え、討論を終ります。議員各位のご賛同をお願いします。