2016年3月23日 福田くみ子議員討論
日本共産党の福田久美子です。
日本共産党を代表して、議案第18号平成28年度宇都宮市一般会計予算、第70号、第71号、第72号のLRT事業に関する各議案について、反対する立場から討論を行います。
まず、議案第18号平成28年度宇都宮市一般会計予算について、反対の理由を述べます。
さて、言うまでもありませんが、地方自治体の一番の役目は、住民福祉の向上にほかなりません。市民の税金は住民福祉の向上のためにこそ使うのは当たり前のことです。アベノミクスについて、安倍首相は都合のいい指標のみを示して、経済は上向きと強弁していますが、実質賃金は4年連続マイナス、個人消費は安倍政権になって4兆円もマイナス、消費税の8%の影響はいまだに続き、アベノミクスの破綻はこの事実が示しているではありませんか。国の政治に期待が持てない中で、市民の願いが一体どこにあるのか全く眼中にないのが本市の新年度の予算ではないでしょうか。
まず第1に、無駄遣いを具体的に指摘します。
その最たるものがLRT事業費です。昨年度の繰り越しも含めると100億円を超える予算が計上されています。多くの市民がどうしても必要と望むならば納得もします。政府の経済対策にも期待が持てず、東京オリンピックや東日本大震災からの復興、消費税増税の影響からも、コストのさらなる高騰が予想される中、この時期に、市民合意の確認もないまま、住民の安全対策や利便性は置き去りのまま、LRTの建設着手は断じて認められません。市長は、身の丈に合った事業と言いますが、市民の切実な願いを犠牲にした事業となっていることはますます明らかです。
無駄遣いはまだあります。大手町再開発事業、30階建てのマンション建設に今年度5億4,335万円、効果も検証されず、民間丸投げの都市ブランド戦略推進費6,652万円、費用対効果の薄い若年夫婦・子育て世代家賃補助金、住宅取得補助制度7,356万円、自治会への監視カメラ設置助成金3億3,550万円、議員の海外視察費などへの支出は見直すべきです。
第2に、格差と貧困の広がりはとどまるところを知りません。身近な暮らし、将来への投資である保育や教育、地域経済を支える施策の拡充が求められているのに、予算づけは圧倒的に不足している状況です。具体的に指摘します。
1つ目に、待機児童対策は、認可保育所の新増設で行うべきです。特に切実なゼロ歳から2歳児の待機児童対策は、保育士資格を有する職員が半分でよい地域型保育事業に依存、304名もの定数拡大を、保育の質の低下の懸念のある安上がりで、より公的責任の軽い手法で行おうとしています。潜在的保育需要に目をつぶり、名目上の待機児童ゼロを求める安上がりの保育行政路線では、待機児の解消、保育の質の確保、保育士の処遇改善という矛盾は解決できません。「保育園落ちた」の匿名ブログは他人事ではありません。
2つ目に、身近な住民サービスの削減、事業先送りです。合併10年目の河内・上河内地域自治会議、保健センター、産業土木課の廃止は、住民サービスの低下を招くことは必至です。
3つ目に、貧困・格差対策の拡充は切実です。就学援助制度は、本市の援助率は、昨年度、要保護・準要保護合わせても8.9%と、全国最低クラスです。民生委員の意見書の廃止、教育委員会への直接申し込み、入学準備金の前倒し給付など改善策を講じ、必要な世帯が受けやすくするべきです。生活困窮者支援は、相談事業、学習支援や就労支援にとどまらず、早急な拡充が求められています。
さらに、生活保護世帯は、冬季加算の特別基準が設けられ、人間らしい尊厳が守られる状況ではなくなっています。年金給付が事実上削減の一途をたどる中で、困窮世帯を支える行政の拡充が求められています。
4つ目には、商工費です。大企業誘致のための企業誘致定着促進費8億852万円、対して、中小企業促進費は8,604万円、余りにも大企業優遇です。足腰の強い地域経済を築く上でも、地元中小企業支援の拡充を強く求めます。
5つ目に、マンパワーの育成は、長期的視野に立った行政運営を考えれば大変重要な視点と考えます。目先のコスト削減ばかりを重視した職員定数削減や非正規への置きかえ、外部委託の拡大は、人材育成の機会を失い、サービスの質の低下、消費税の無駄な支出、地域経済の発展の妨げになり、総合的、長期的に見ればマイナスです。消防職員や生活保護のケースワーカーの国基準を大きく下回った配置の改善、1人当たり3万6,000人もの担当を持つ保健師の配置の改善、市単独の学校指導助手、学校図書館司書等の処遇改善は急務です。
LRT建設が暮らしや福祉、教育、地域経済を圧迫しています。限られた財源は、切実で効果的な事業にこそ優先的に使うべきです。LRT事業が佐藤市長時代に負の遺産とならないよう、新年度予算の撤回を求めます。
次に、LRT計画実施に向けての関連議案について、一括して反対の理由を述べます。
本市のLRT計画は、いまだ東西の全体像を示すことができないまま、市政最大の重要事項でありながら、民意も問わず、費用対効果も無視した大暴走です。JR宇都宮駅東区間の当初の概算事業費258億円を大きく超える事業費のもと、国民、市民の血税を湯水のように注ぎ込もうとしています。市長は、現在と未来の宇都宮市民のために、市の憲法、自治基本条例に基づいて、市民意思の明快な確認と証明は不可避であることを自覚すべきです。
私は、その上でこの3本の議案のかなめとなる軌道運送高度化実施計画には幾つもの瑕疵があり、軌道事業の特許取得申請は取り下げるべきと考えます。
その理由の第1は、LRT専用走行区間、すなわち、専用新設軌道まで、議案第71号で実態を無視し、道も全くないところを市道として認定を行い、道路の上に軌道を通す併用起動としたことです。このことにより、軌道運転規則第3条1項の鉄道に関する技術上の基準を定める省令の規定準用を免れ、特に、平石中央小学校付近の辰街道の交差点安全の抜本的対策を回避していることは重大問題です。道なき道も道路認定すれば、軌道は道路上などという抜け道に頼らず、正々堂々と住民と子どもたちの命と安全を守り抜く立場で臨むべきと思いますが、いかがでしょうか。
第2に、LRTは、法律で時速40キロメートル以下と定められています。現行法上、併用軌道上では例がなく、実現性のない時速50キロメートル、70キロメートル走行を掲げ、市民、利用者に幻想を振りまく計画である点です。
第3に、事業採算制の大前提となる需要予測には、主たる利用客となる工業団地従業員の長期動向予測、企業バス利用者の実際の利用動向を考慮に入れず、LRT乗車の意思を問わない県央広域都市圏生活行動実態調査のもとでの1万6,318人の需要予測は極めて無理があることなどを指摘し、大もとの土台が揺らぐ3議案にはきっぱりと反対を表明するものです。
以上、議案第18号及び第70号、第71号、第72号についての反対の理由を述べました。
議員の皆様の勇気ある御判断を期待いたしまして、私からの討論を終わりにいたします。