2015年9月30日
福田くみ子議員の討論
私は、日本共産党を代表して、陳情第3号と第7号の不採択に反対する討論を行います。
陳情第3号は、LRT事業計画の住民投票の実施を、そして、第7号は、同計画についての白紙撤回、ないし住民投票の実施を求めるものであります。
陳情第3号の陳情事項が平成26年の住民投票条例制定の直接請求の再審議を求めることについて、陳情者の願意は、LRT事業の賛否について、住民投票を求めていると解されることから、今議会での採択を支持するものです。
さて、私は、この2つの陳情の趣旨は、多くの市民の当然の思いとして、議会は正面から受け止めるべきだと、改めて申し上げたいと思います。
建設常任委員会では、この2つの陳情とともに、補正予算、議員提案の住民投票条例案など、LRT関連議案が審議をされました。これらの討議の中では、住民投票は必要ないとする委員の皆様からは、二元代表制において住民投票を行うことが議会軽視であるかのようなご意見もございました。選挙によって市民の負託を受けていることへの重責は当然のことでありますが、市長選挙における出口調査で、市長に投票した人の3割を超える人がLRTに反対していたとの結果でも明らかなように、有権者は1票によってすべてを白紙委任したわけではないのです。
住民投票について規定されている宇都宮市自治基本条例は、平成21年に佐藤市長みずからが提案し、全会一致で制定されました。自治基本条例は、本市における自治の基本理念を明らかにするとともに、市民の権利及び責務が明記され、市のホームページでは、自治体の法令における頂点に位置づけられ、自治体の憲法とも言われていると解説されています。つまり、権力の暴走に歯どめをかける条例でもあるわけです。
また、この条例は、市政への市民参加を促す民主主義の発展の成果でもあります。その自治基本条例に基づく住民投票は、市政に係る重要事項について、間接民主主義である議会制度を補完し、住民の総意を的確に把握するための極めて合理的な手法です。住民投票を行うことについて、二元代表制を軽視しているとのご意見はとんでもない時代錯誤です。
陳情第7号にもあるように、今年2月には、埼玉県所沢市で学校のエアコン設置について、また、8月には、つくば市で総合運動公園の建設に関して住民投票が実施されています。住民投票は、今や全国の地方自治体では、民意を確認する手法として広く活用されているのです。宇都宮市自治基本条例を持ち腐れにしてはいけないと改めて呼びかけるものです。
次に、なぜ、今、改めて住民投票の実施を求めるのか。第1の理由は、地域公共交通総合連携計画の認定には、住民の合意形成が要件となっているからです。住民合意について、市長は丁寧な説明をしていくと繰り返していますが、丁寧な説明をして理解を求めることと、住民合意が得られたかどうかは別の話です。全くもって問題のすり替えです。この機会に住民投票を行い、その結果をもって住民合意が得られたことを市民に対しても、国に対しても客観的に示すことは、LRT建設後の長期間にわたる運営にも、そして、宇都宮市の今後の市政発展にも必ずプラスになると考えます。
第2の理由は、計画の大きな変更があるときは、改めて市民に賛否を問うのは至極当然のことだからです。運営主体について、上下分離方式による民間会社から、第三セクターによる官民連携の新会社で行う方針に切りかえられたことは、市民に賛否を問うべき計画の大きな変更に違いありません。利潤追求が主な目的である民間会社が担うことが難しいと判断した事業でもあります。事業運営のリスクへの懸念はますます大きくなったと言えます。市民の血税がそこに使われることが明らかになった今こそ、市民の賛否を問うのは当然の責務ではないでしょうか。
今、安倍自公政権のもとで、安全保障関連法が列島騒然とも言える反対運動の広がりの中で、その声に全く耳をかさずに強行に成立が図られました。私が恐ろしいと思うのは、法律の中身はもちろんですが、それ以上に憲法違反の法律が立憲国家ではあり得ない手法によって、最後には数の力によって押し切ってしまわれたことです。圧倒的多数に憲法学者、歴代の内閣法制局長、さらには、元最高裁判所裁判長など、圧倒的多数の専門家が憲法違反と言っているにもかかわらずです。そして、専門家としての判断と政治家としての判断は違うとまで言っている。安全保障のためには憲法違反であってもやむを得ないと開き直っているのです。このような国民の声を聞かない権力側の考え方や手法はファシズムの始まりではないかと懸念する声さえ聞こえています。
私は、宇都宮市のLRT事業計画の進め方は、この安倍自公政権の暴走と重なって見えて仕方ありません。これらの陳情はLRT事業についての市民の関心の高まりのあらわれであり、この宇都宮市に、愛する郷土に、民主主義と市民の市政参画を大きく根づかせるまたとないチャンスです。どんなにお金がかかっても、採算が見込めない事業であっても、住民福祉の向上になくてはならないと多くの市民が考えるならば、市民一丸となって進めようではありませんか。
議会は大きく胸襟を開き、市民の誰もが納得のいくまちづくりを進めるためにも、市長の住民投票の決断を後押ししようではありませんか。この立場こそが、市民の代表として議会の役割を果たすこととなると心から訴えるものです。
宇都宮市の憲法、自治基本条例に基づく住民投票の実施を求めるこの2つの陳情について、強く採択を求め、私からの討論といたします。