2015.7.1
荒川つねお議員の討論

日本共産党宇都宮支議員団を代表して、ただいま議題となっている「安全保障法制案に関する意見書採択を求める陳情」について、不採択に反対の討論を行います。

 

5月26日、国会審議入りしたこの法案について、安倍首相は平和安全法制と言っていますが、その中身は戦争法案そのものではないしょうか。

法案は全て、自衛隊の役割を拡大して海外派兵や米軍の支援に当てるためのものです。

地理的制限もありません。地球上どこでも派兵して、米軍のあらゆる戦争に参加します。

戦地でも活動して自衛隊が攻撃される危険があります。武器を使用し、日本が「殺し殺される」道に入る危険が飛躍的に高まります。「二度と海外で戦争しない」を誓った憲法の平和原則を根本から破壊し、日本を米国とともに「海外で戦争する国」に作り変えるものです。「平和安全法制」どころか「戦争法案」そのものです。こんなものが、憲法9条の下で許されていいはずがありません。

 

 さて、政府が国会に提出たこの法案は、形の上では2本です。

 1つは「国際平和支援法」です。これも何か、よくわからない名前ですが、本質は「海外派兵恒久法」です。これまで、海外派兵のたびに特別措置法をつくっていたのをやめて、政府の判断でいつでもどこでも、米軍や米軍主導の多国籍軍を支援するため、自衛隊を海外派兵するための法案です。

もう1つが過去の海外派兵法や米軍支援法など10本を全部一括で書き換える「一括法」(平和安全法制整備法)です。改定されるそれぞれの法律は、過去長い時間をかけて国会で議論してきたものです。例えば、PKO(国連平和維持活動)法だけでも、衆院で約160時間も審議しました。それなのに、安倍政権は11もの法制案を一国会・衆院でわずか80時間ほどで通してしまい、安倍首相の米国議会での「夏までに実現させる」の公約に従って8月上旬までに成立を狙っていました。

 

 しかし、この間の国会論戦を通じて、政府説明が次々と破綻し、この法案そのものの土台が総崩れの事態のもと、「60日間ルール」などを見通して、過去最長、95日間の会期延長を強行する暴挙に出ています。ここまでしなければ採決の見通しが立てられない法案などは、そもそも廃案にするのが筋というものではないのでしょうか。

 

 この、いわゆる「戦争法案」は、議論が進めば進むほど日ましに、憲法違反の流れが太く大きくなっています。衆議院憲法審査会での参考人質疑では、自民党推薦の憲法学者も含め全員が「違憲」と明言しました。また200人をこえる圧倒的多数の憲法学者が戦争法案は「違憲」の声明を上げました。山崎拓、自民党元総裁など同党元幹部や歴代政権の閣僚経験者4氏が6月12日、東京日本記者クラブで記者会見し、安倍政権の「安保法制」に反対する意見を声明や口頭で表明しました。

6月22日の衆院議員安保法制特別委員会の参考に質疑では、宮崎・阪田両元内閣法制局長官が「違憲」(政府の憲法解釈からの逸脱)と表明し、法案の撤回を求めています。また、共同通信が行った6月20,21日実施の世論調査では、同法案を巡り「違憲」が56.7%、反対が58.7%今、国会の法案成立反対が63.1%、安倍政権は十分に説明していないが84%に増加しています。陳情者の依る立場は、圧倒的国民・市民に思いと一致しているのではないでしょうか。

 

 さて、この陳情は、総務常任委員会で主に「国防は国の専権事項」であり地方議会においてはこの陳情は馴染まない」との意見が多く不採択ともことです。

 しかし、それは陳情の趣旨を正確に理解したものとは言えません。この陳情は、同法案に反対、廃案を求める立場からは出されていますが、陳情の趣旨は、同法案が「違憲か合憲か」の判断を求めたものでもなく「少なくとも今国会で採択しないこと」「その上で広く国民的議論を尽くすこと」を求めたものです。

 

 いま、方議会において6月19日時点で同法案に「反対」や「慎重審議」を求める意見書可決は、34都道府県の195議会に達しました。さいたま市では自民、公明、民主、共産の各党で、「慎重審議を求める」意見書を共同提出、全会一致で可決しています、

 

法案提出前の集団的自衛権行使容認に反対する意見書については、可決した地方議会は254議会に及んでいます。こうしたことを見ても、「国防は国の専権事項」などと言って陳情願意を門前払いすることはあまりにも視野が狭すぎるのではないでしょうか。

不採択に反対する第2の理由は、宇都宮市民の平和と安全にも重大なかかわりがあり、国の専権事項などと安穏とはしていられないことにあります。

この宇都宮には2つの自衛隊基地があり、多くの自衛隊員と家族の方が宇都宮市民として生活しています。

 

戦後日本国憲法は、国民に受け入れられ、9条の下で、日本は70年も戦争をせずに、殺し殺されもせずに来ました。中東でも手を血に染められていない。価値のあることです。安倍首相は、これを投げ捨て米軍の2軍となって参戦しようとしています。この法律が通れば市民である自衛隊の方々が、他国での戦争で生命の危険と殺し殺される立場に立たされてしまうのです。しかも宇都宮駐屯地の中央即応連隊は、真っ先に海外派兵されるもっとも危険な任務を持つ部隊です。

 

元内閣法制局長官の阪田雅裕さんは、集団的自衛権の行使は、進んで戦争に参加することであり、つまり的となる相手国に、わが国領土を攻撃する大義名分を与えることでもあります。国民を守るというより、進んで国民を危険に晒すという結果しかもたらさない」とも言っています。これはそっくり国民を市民に置き換えられることではないでしょうか。

 

最後に「戦争法案」に対する憲法違反との批判に、安倍政権は、憲法解釈の変更は、「政府の裁量の範囲」などと強弁しますが、憲法は公務員などの憲法尊重擁護義務(99)を定め、憲法に反する法律は「その効力を有しない」(98)としています。まさに憲法の勝手な解釈変更で憲法を破壊することは、立憲主義否定の暴挙というほかありません。

 

同じ憲法尊重擁護義務を担っている私達議会人が、この安倍自公政権に対し、こんな遠慮深い意見書も出せないようでは天下の宇都宮市議会が泣くというものではないでしょうか。

 

陳情不採択を考えておられる皆さんに勇気ある態度変更を心から呼びかけて討論を終わります。

 

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