2014.9.30
荒川つねお議員の討論
私はただいま議案となっている陳情70号,71号,ともに集団的自衛権の行使を容認した閣議決定の撤回の意見書提出を求める陳情について,不採択ではなく,採択すべきとの立場から討論を行います。
安倍政権は7月1日に国民多数の声に背いて,集団的自衛権行使容認を柱とした解釈改憲の閣議決定を強行しました。
日本共産党は,この閣議決定は,憲法9条のもとでは海外での武力行使は許されないという従来の政府見解を180度転換し,「海外で戦争する国」への道を開くもの。こうした憲法改定に等しい大転換を,与党密室協議を通じて,一片の閣議決定で強行するなどというのは,立憲主義を根底から否定するもの。憲法9条を破壊する歴史的暴挙であると断じています。
私は,戦後日本国憲法とともに生まれ,育ち,生きてきたもののひとりですが,「海外で戦争する国づくりをめざす閣議決定は,戦後日本の国のあり方を根底から覆そうというものです。60年前に創設された自衛隊は「陸海空軍,その他の戦力はこれを保持しない」とうたった憲法9条に反する違憲の軍隊としてつくられました。それでも60年間,自衛隊は他国の人を一人も殺さず,一人の戦死者も出すことはありませんでした。それは,憲法9条が存在し,そのもとで海外での武力行使をしてはならないという憲法上の歯止めが働いたからにほかなりません。
閣議決定は,こうした戦後日本の国のあり方を否定し,日本を「殺し,殺される国」にしようとするものです。それは,決して日本の国を守るものでも,国民の生命を守るものでもありません。米国の戦争のために日本の若者に血を流すことを強要し,米国と一体に他国の人々に銃口を向けることであり,このことによって日本が失うものは,はかり知れないのではないでしょうか。
私は,日本は今,戦争か平和かをめぐって,戦後最大の歴史的岐路を迎えていると実感しています。保守も革新もありません。「海外で戦争する国づくりを許すな。解釈で憲法を壊すな」この一点で議会からも良識の声を国にあげることは当然だと思いますが,いかがでしょうか。
私の調べたところによると,8月31日現在,政府に集団的自衛権の行使容認に対する意見書を可決した地方議会は191議会に達しています。岩手県議会の意見書は,閣議決定について「国会での議論も行わずに,与党内で調整したのみで行われた」と指摘。「時々の政権の都合で解釈を変えられるようになれば,憲法が憲法でなくなり,これまでの国のかたちを大きく変えるだけでなく,民主主義を大元から破壊することにつながる」「国においては戦争のない平和な日本,平和なアジアと世界をめざす立場から,現憲法下において,集団的自衛権の行使を可能とする全ての立法や政策を行わないよう強く要望する」と強調しています。
また,最近,赤旗日曜版に登場した「憲法9条で自衛隊と自衛戦争をはっきりと認めるべき」と改憲論者を自任する小林節慶応大学名誉教授は,安倍首相は三重の憲法違反をしていると,集団的自衛権行使をめざす路線に待ったの声をあげ続けています。
小林節慶応大学名誉教授の言う三つの憲法違反とは,第1に,憲法9条を踏みにじったことをあげています。憲法9条は1項で「戦争」を放棄し,2項では「軍隊」と「交戦権」つまり,海外での戦争を遂行する手段の保持も禁じています。ですから,日本は自らが侵略された場合にのみ自衛隊が抵抗する「専守防衛」を国是としてきました。「海外派兵の禁止」もこの憲法に由来する当然の国是だったのです。
自国が侵略された場合,単独で反撃することを正当化する権利が「個別的自衛権」であり,国際慣習上,全ての独立主権国家に認められています。他方,いま問題になっている「集団的自衛権」は,同盟国を支援するために海外派兵することがその本質です。これも国際法上では認められていても,わが国では憲法9条で行使できないとされてきました。この集団的自衛権の行使を解禁するという安倍政権の閣議決定は,単純・明解・乱暴な憲法違反と指摘しています。
第2の違反は,憲法改正手続きを定めた憲法96条違反です。改正手続きなしに内閣が憲法解釈の変更だけで,憲法9条を勝手に踏み越えるのは明白な違反としています。
第3の違反は,憲法99条に明記された公務員の「憲法尊重・擁護義務」に対する違反であると明言しています。
その上で,この安倍政権の三重の憲法違反に対して,憲法で権力者を監視する資格を与えられているのは主権者である国民であり,憲法が期待する主権者としての役割を,今我々が果たす時であると呼びかけています。
小林慶大名誉教授は,私達とは憲法9条への立場は違っても,この問題で信頼できる見識と言論を貫いていると思いますが,皆さんいかがでしょうか。
さて,総務常任委員会の審議においては,今回の自民・公明による集団的自衛権の行使容認はあくまで「限定的なものにすぎない」旨を強調する意見がありました。「国民の生命,自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険」がある場合であるとのことです。しかし,「明白な危険」があるかどうか判断するのは誰か。時の政権です。「限定的」というが,時の政権の一存で,海外の武力行使がどこまでも広がる危険性があります。
また,「必要最小限の実力行使」と言っていますが,いったん海外での武力行使に踏み切れば,相手から反撃を招き,際限のない泥沼に陥ることは避けられません。集団的自衛権には,ことの性格上,「必要最小限」などということはあり得ません。まして,1972年の政府見解をつまみ食いをして,閣議決定は「従来の政府見解における基本的な論理の枠内で導いた論理的帰結」などの論に至っては,阪田元内閣法制局長官の言にあるように,1972年見解は,外国から武力攻撃があった場合に反撃する個別的自衛権を認めているという趣旨のものだ。自国が攻撃を受けていない状況では武力行使はできないと説明している。他国が受けた攻撃にそろって反撃する,集団的自衛権の行使容認に援用することなどできないと,その詭弁を批判しています。
皆さん,私達議員は,それぞれが政治信条を持ち,その時々の問題に対して対応を迫られます。その時に大切なことは,議会人として王道を歩むことではないでしょうか。
陳情70,71号については,その本旨をくみ取り,採択し,まっとうな宇都宮市議会の声を国に提出しましょう。
討論もないのに採決で自らの態度を豹変させることは禁じ手ですが,この議案は以上の討論を行っております。議員の皆さんが態度を変えることは,何ら恥ずべきことではなく,勇気ある議員の証明です。
議員各位のご賛同を心からお願いし,討論を終ります。