2014.6.30
福田くみ子議員 討論
日本共産党の福田くみ子です。私は日本共産党を代表して陳情63、65、66、67号の不採択に反対する討論を行います。
まず、陳情第63号「介護・医療総合確保法案」の撤回についての意見書の提出を求める陳情の不採択について反対の理由を述べます
6月18日、同法案は参議院本会議で自民党公明党の賛成により可決を強行、成立しました。この法律は、全国の210もの地方議会が「介護の社会化に逆行し、制度の理念を否定するもの」「地域格差が生じ、サービス低下や利用料値上げにつながりかねない」などとして、反対や批判、強い懸念を表す意見書を可決しています。可決成立したからと言って指摘された問題は解決したわけではありません。意見陳述にもあったとおり、廃案を求める意見書として提出すべきであると考えます。
さて、陳情では、第1に安易な急性期医療ベッドの削減と機械的な早期退院の強要はしないことを求めています。
この法律では、都道府県主導で、病床の再編・削減を推進する仕組みがつくられ病院が従わない場合、医療機関名の公表、各補助金や融資対象からの除外などの制裁措置をとるとしています。国民皆保険を支えてきたのは自由開業医制度とフリーアクセスの原則のもとでの、質の高い開業医と民間病院、公的な病院の献身的な努力と自発的な連携です。強権的なベッド規制は、国民皆保険制度の根幹を揺るがすもので容認できるものではありません。
陳情の第2に、介護保険要支援者の訪問介護、通所介護を保険給付から外さないことを求めています。この法律では、要支援者の訪問介護、通所介護は保険給付から外し市町村の地域支援事業に置き換えることとしていますが、それは受給権の剥奪に他ならないと言えます。国会の審議の中では、地域支援事業に移行した場合の専門的なサービスは多くとも現状維持、2025年には5割程度になるという試算が示されました。新たに要支援と認定された人は、ボランティアなどのサービスしかうけられなくなるでしょう。要支援者への給付費の伸び率5,6%が、3,7%に抑制され、2035年度では給付抑制額は2600億円に上ります。サービス単価や、人件費の切り下げ、利用者の負担増につながり、介護サービスを質量ともに低下させることは、はっきりしています。要支援者のこれらのサービスを介護保険から外さないでとの、要望は至極当然なものと考えます。
陳情の第3に介護保険サービスの自己負担を増やさないことを求めています。政府は、年金収入280万円の世帯では、平均的な消費支出をしても年間60万円が余るので2割負
担は可能だと言うことを論拠に、介護サービスの利用料自己負担を2割にする所得基準を提案しました。しかし、我が党の小池晃参議院議員の質疑で政府の説明は崩壊し、60万円余るという説明は撤回され、大臣は「反省している」と述べました。このような法案がそのまま可決成立してしまいました。採決を強行し、賛成した議員の責任は重大です。
4点目に、特別養護老人ホーム利用者を要介護3以上に限定しないことを求めています。52万人の特養待機者のうち17万8千人は、要介護1,2です。こうしたかたがたは、今でも入所待ちの行列に並んでも後回しにされていますが、今後は行列に並ぶことさえ許されなくなります。自宅介護をしながらせっぱ詰まった思いで入所を待つ人たちの願いに背く改悪は、家族が高齢者の介護度悪化を願う「非人道的な」結果さえ生みかねません。
社会保障のためと言って消費税増税したのに社会保障の拡充には回さず、社会保障の拡充を求めると「財源不足」を口実に拒否し、法人税減税に走り出し、その財源は社会保障の削減で賄う。これほど身勝手で無責任な政治は許されるはずがありません。
以上のような理由から、陳情63号は採択すべきと考えます。
次に陳情65、66,67号は関連がありますので、一括して不採択に反対する討論を行います。
これらの陳情は、ホワイトカラーイグゼンプション、限定正社員、解雇の金銭解決制度、などの労働法制の改悪に反対し、低賃金・低処遇の改善など労働者の権利をしっかり守るルールの整備を求めるものです。
これらの陳情を採択すべきと考える理由の第一に、陳情で指摘している残業代をゼロにする「ホワイトカラーイグゼンプション」は、労働者に苦痛を押し付け人間性を破壊し「過労死」を蔓延させるものであり、人間らしい働きかたを求める流れに逆行するものと考えるからです。これは、安倍晋三首相が議長をつとめる政府の経済財政諮問会議と産業競争力会議で示されたもので、労働基準法で1日8時間、週40時間と定められている労働時間の上限を取り払い、どんなに長く働いても残業代はゼロという制度です。時間ではなく成果で評価されるとは、結局、企業が求める「成果」がでなければ、労働者を何時間でも何日でも働かせるということになります。24時間365日働かせて、残業代も深夜手当も休日出勤手当も保障されません。労働者の健康と生命をむしばみ人間性を破壊して、家庭や地域まで崩壊させるこの制度の導入は、やめるべきです。
第2に、解雇しやすい正社員を増やす「限定正社員」、企業がお金さえ支払えば解雇が正当化される「解雇の金銭解決制度」は、正社員の解雇を容易にすることで、労働者全体の雇用を不安定化させるものにほかなりません。
第3に、日本の最低賃金は、先進国で最低水準であり、引き上げは喫緊の課題と考えるからです。日本の最低賃金は、2013年2月の調査では、全国平均で749円でフランス1084円、イギリス928円、オランダ1021円、アメリカ753円など先進国で最低水準です。年間2000時間働いても150万円以下ですから、低賃金労働者を生み出しやすく、それが全体の賃金を引き下げる構造となっています。
いまや日本の非正規雇用は35,5%と急増、これもドイツ14,5%、フランス13.5%、イギリス5.7%と比べても異常な多さです。
大きな社会問題になっている「ブラック企業」が成り立つのは、「正社員で募集すれば、いくらでも人は集まる」と言う労働市場になっているからです。働いている人は、「やめたら正社員での再就職はできない」と言う恐怖感から、連日、深夜までの長時間労働にも、パワハラやいじめにも耐えしがみつかざるを得ない状況に追い込まれていきます。
労働者を使い捨て、使いつぶしの働かせ方を広げた労働法制の規制緩和の流れを転換させて、人間らしい雇用のルールをつくることは重要な課題となっています。ルールある経済社会へと進んでこそ、経済を土台から強いものにしていくことができると考えます。
以上、陳情65,66,67号の不採択に反対する理由を述べました。議員各位の皆様の良識あるご判断をお願いいたしまして討論を終わります。