日本共産党の福田くみ子です。議案第1号について、原案に賛成する立場から会派を代表して討論を行います。
この「宇都宮市のLRT導入計画の賛否に関する住民投票条例制定」の議案は、宇都宮市政において史上初めての住民発議による住民投票条例案です。日本共産党はこの3万人を超える署名に込められた願いと、この裏側にある同じ思いの多くの市民の願いを真正面から受け止めて、討論に臨みます。自ら決めた自治基本条例を覆す議会であってはなりません。議員一人一人の皆様のこの間の真剣な討議の上に立って、市民の皆様が納得できる結論が導き出されることを切に願うものです。
まず、賛成する理由の第1は、今回の住民投票が実施されれば、市長にとっても、議会にとっても、市民の市政参画と市民協同のまちづくりを進めるまたとない大きなチャンスとなると考えるからです。
住民投票は、地方自治法と宇都宮自治基本条例に基づく市民の権利です。この30,512筆もの署名は、LRT事業に対する意見表明の機会を求める市民の声であり、まさしく市政への市民参画を求める切実な声です。
市長が提案し、全会一致で制定された宇都宮自治基本条例は、市政への市民参画と市民協同のまちづくりがうたわれています。一方議会では、開かれた議会や議会活性化、民主的運営のあり方などについて、熱心に議論を重ね議会改革に取り組んできました。市政発展を願う車の両輪である市長と議会、どちらにとっても、またとない大きな飛躍のチャンスです。そのチャンスを手放す議会であってはなりません。
第2の理由は、市長が意見書で述べておられる「住民投票は必要ない」とする3つの根拠は、この間の臨時議会における質疑や討議の中で、もろいものであることがはっきりしたからです。
その1点目に、市長は、住民に対して丁寧な説明をしてきたことを強調していますが、一方で、いまだ市民理解は不十分と認めています。つまり、民意は得られていないということです。オープンハウスや出前講座、全戸配布のパンフレット作成など、市民理解促進の事業を行いながらも、その結果や効果を把握しようとしないのは、納得がいきません。どこまで市民合意が進んだのか、市政世論調査やアンケートでも把握するチャンスはいくらでもあったはずです。住民意思の的確な把握なしには、市民協働のまちづくりはかないません。
2点目に、市長は2,012年の市長選挙での勝利によって市政運営全般の負託を受けたことを強調されています。しかし、市長選挙の投票率は38%と史上最低であったこと、対立候補は当初からLRTを最大の争点に掲げ約4万票を得ていること、市長に投票した人の33%、33000人あまりがLRTに「反対」もしくは「どちらかと言うと反対」との出口調査結果であることなどから、市長選挙勝利をもって、LRT事業にも市民からの賛同を得たとするのはあまりにも無理で乱暴な論理と言えます。
3点目は、議会で承認を得ているとの点についても、調査費としての承認であり、事業そのものの賛否は問われていない点や、大きな計画変更についても、2元代表制を尊重する立場を強調しながらも、議会に対する説明や承認は、後回し軽視されてきました。議会軽視でことを進めながら、「2元代表制を尊重しているから住民投票は必要ないと」、まさにご都合主義の論理ではないでしょうか。
市長が、住民投票を必要としない3つの根拠は2日間の審議の中で、ことごとく崩れ去りました。
さて、自治基本条例によれば、第4条、市民の市政に参画する権利、第6条、市政運営における市民の意思の尊重、第7条では、議会の市民意思を的確に反映させる責務がうたわれ、第15条では、住民投票が、位置づけられています。住民投票とは、間接民主制を補完し、住民の総意を的確に把握するために実施されるもので、住民自らの意見を直接表明する機会となるものです。1ヶ月と言う短期間で、厳しい規制のある署名活動に参加した人は、1500人を超えています。この中には、署名活動など初めてと言う方もおりました。
参考人のお話にもあったように、「LRTは、あったらいいな」と言う方も「住民投票で決
めること」には賛成していただけました。ここで問われているのは、LRTの賛否ではありません。市政の主権者たる市民が宇都宮の前途にかかわる大事業に対して、市民参画と意思表明の機会を求めているからです。願いを議会が受け入れるかどうかです。
30,000人の署名は、これまでのLRT導入の進め方に対する市民の大きな不満がこめられています。住民の意思が置き去りにされ、議会軽視で物事が決められていくことへの不満です。残念ながら市長は、住民投票は避けたいとのことです。
しかし、もし、この議案が議会において否決されれば、議会に対する市民の信頼は大きく失墜するのではないでしょうか。また、住民投票が行われず市民意思が把握されないままLRT事業を進めれば必ず、困難にぶちあたるのではないでしょうか。
反対に住民投票で市民の賛同が確認できれば、LRTの事業を進めるにあたっても、多くの市民の協力が得られ、推進の大きな力になります。環境問題や福祉的な側面からも市民の意識醸成が進み、より積極的なLRTの利用促進にもつながるでしょう。住民投票による住民意思の把握は、どちらに転んでも市政発展の力になると確信します。このような点からも、LRTを進めたいとお考えの議員のみなさんもどうかこの大きなチャンスを逃がさないでください。議会はこの提案について「アラさがし」をしたり、「重箱の隅をつつく」ような論議をするのではなく、真意を真正面から受け止めるべきです。市長のおっしゃる100年先のまちづくりを真に考えるならば、この住民投票を恐れることなく、実施すべきです。
議員各位の皆様の良識あるご判断を期待いたしまして、日本共産党を代表しての議案第一号の賛成する討論といたします。