2013.12.19
荒川議員
宇都宮市国民健康保険税条例の一部改正について 反対討論
私は発言通告に基づき、ただ今議題となっています議案第147号、宇都宮市国民健康保険税条例の一部改正について、市議会日本共産党を代表して反対討論を行います。
この改正の理由は、被保険者の高齢化等に伴う医療費の増加により、平成26・27年度の給付費の増加が見込まれるため、税率の改定をしようとするものであるとしています。税率改定の主な内容は、所得割の基礎課税額(医療保険分)において、改正前の6%から6.36%にすることをはじめ、後期高齢者支援分、介護保険分ともに0.2%引き上げなどとなっています。
その結果、一人当たりの国民健康保険税額は、93,055円から98,827円へと値上り、例えば、一人世帯、所得100万円で9,000円値上げとなり、年額152,200円に、夫婦世帯、所得200万円で21,300円の増税となり、年額308,200円になります。一世帯当りの所得に対する国保税負担率が更に上昇し、他の医療保険と比べ、最も平均所得の低い国保加入者が最も高い保険料を支払っている実態がますます鮮明となる改正案です。今でも、国保税が高すぎる。払いきれないの声が市民の中で渦巻いているのは、皆さんご承知のことと思います。
国保の所得階層では、所得なしから33万円以下が36.4%。33万円を超え200万円以下が41.1%の構成比となっています。所得階層別の滞納世帯状況においても、所得なし層が36.7%、次の200万円以下が44.2%を占めています。国保税を値上げしても、最早、払いきれない深刻な事態が広がっているとみるべきではないでしょうか。
しかも、値上げに追い討ちをかけるように消費税増税、年金の切り下げ、70歳から75歳未満の高齢者の医療費負担が1割から2割になります。今回の国保税値上げは、保険料を納めることのできない世帯を更に増やすことになり、そうなると、更に保険税を高くしなければならなくなり、更に滞納が増えるという悪循環をよりいっそう深刻にひろげてゆくのは明らかではないでしょうか。
国保税は、加入者の負担能力や生活実態を把握し、負担できる保険税額が課せられるといった仕組みになっていないのが問題です。
国や保険者である自治体の長が、現在の国保の制度的危機やその基での被保険者である市民の生命と健康の危機に対して認識が希薄であるならば、そこを指摘し、正す立場に立つべきは、市民の代弁者である私達議員をおいて他にいるでしょうか。
憲法25条に基づく国民皆保険を下支えする社会保障としての国民健康保険制度の構築は、そのぜい弱な基盤などの特性の中で、国庫負担を大幅に増額させる以外にありません。それも、総医療費に対する定率国庫負担を増額させるべきです。定率国庫負担は、調整交付金とは違い、全ての自治体に無条件に拠出される部分です。
佐藤市長は、市民、被保険者の国保税、もう払いたくても払いきれない事態を我が事として、国に対し、国保危機打開を求めているのでしょうか。
今回の国保税値上げ提案を見るとそうは見えません。市民はまだ重税に耐えられる。耐えてもらうと、市民の命と健康を脅かす国保税の悪循環に更に足を踏み出そうとしています。
佐藤市長は今こそ、その態度を改め、「国保は社会保障」との原点にしっかり立つべきです。そして、国・厚労省に国庫負担の増額について不退転の決意と迫力でのぞんでほしいと願います。
市議会日本共産党は佐藤市長に、今回の国保税値上げの条例案を撤回することを求めます。
次に、ではどうするのか。
いま述べてきたように、「国保は社会保障」としての医療保障を行う社会保険のひとつであり、自治体の国保財政に対する最終責任は国にあるとすることを前提とした上で、今後2年間については、一般会計からの繰り入れ、収納率の向上、保健事業の充実等で値上げをやめることです。
国保運営協議会に出された資料によれば、平成26年度、財源不足額18億円、平成27年度19億円とのことです。今回の値上げ案では、その内、10億円の繰り入れを前提としているので、実質8億円及び9億円の繰り入れの決断が市長にできれば、今後2年間は持ちこたえることができます。
さて、そこで、平成23年度の中核市の法定外繰り入れ金を見ると、1位は鹿児島市の22億円、次が東大阪市の21億円、高松市20億円、豊田市16億円と続いており、宇都宮市は13位の11億円となっています。一人当たりにすると、1位が高松市の19,606円、次に豊田市が16,951円旭川市、鹿児島市が15,000円台を含め、10,000円以上が13市にのぼります。宇都宮市は8,003円となっています。豊田市なみの繰り入れを行うことは本市の財政水準からしても十分に可能です。
この一般財政からの繰り入れについては、国保加入者という限られた市民への税金投入はおかしいとの尤もらしい議論が振りまかれています。しかし、国保加入世帯は8万世帯を超え、全体の4割を占める他の医療保険に加入しない全ての市民に医療を保障する制度です。現役時代は、健保や共済に入っていた人も、年金生活になると多くは国保に加入します。国保は市民誰もがお世話になる医療制度です。まして、一般会計からの繰り入れが、国保加入者の財布に入るものではありません。
また、一般会計からの繰り入れの根拠のひとつですが、国保税の予算における収入見込み額は収納率の平均を乗じたもので出されます。つまり、最初から100%で計算していません。国保税をなんとか納めている世帯が全体を支えています。収納率が低い責任を被保険者の国保税に転嫁するのは誤りです。収納率が低いのは保険者である市長の責任であり、市税と国保税の収納率の差額分は当然責任を持つべきものであることも指摘しておきたいと思います。
最後に、今後の国保をめぐる動向についてです。国保新聞12月10日付によると、国保都道府県化の協議に全国知事会が参加することを決めたとのことです。協議参加の条件としていた国保の構造的問題の解決や財源確保について、田村厚労相が責任を持って取り組むと回答したからとのことです。私達は国保の広域化は望むものではありませんが、国保は大きく動こうとしています。平成27年には最高限度額の引き上げも待っています。
日本共産党は、こうした動きの中にあって、社会保障・住民福祉の制度として国保を再建するのか、負担増と取り立て強化の路線を一層拡大するのか。いま、国保は歴史的分岐点に来ていると思うわけです。日本共産党は、国保改革を国民・住民とともに進め、国民・市民の命と健康が守られる国民健康保険へ、これからも全力をあげることを表明し、討論を終ります。議員各位のご賛同を宜しくお願いします。
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