2013.10.1
福田くみ子議員 24年度決算認定に反対の討論

発言通告に従い、議案第134号決算の認定について原案に反対する立場から、その理由を述べ討論を行います。

決算の審議にあたって、議会では、会計処理上の不正やミスがなかったかということだけではなく、政策的な視点から主要施策がどのような意味をもっていたのか、どんな問題をはらんでいるのかを明らかにし、その総括を次の予算につなげていくことが重要だと考えます。

2012年度の宇都宮市の決算状況を客観的にみると、財政力指数は0,937で2010年度からは地方交付税交付団体となっているものの、中核市40市中第4位で、上位をキープしています。経常収支比率は93,1%で、昨年からは多少上がってはいますが、義務的経費比率は、49,9%で中核市中10位、辛うじて50%以内に収まっており、比較的自由度の高い財政を維持していると言えます。その上、2012年の自主財源比率は64,5%となり、ここ数年の下降現象から上昇に転じ、中核市中6位と上位を保っています。また、実質公債費比率は7,5%、中核市の中では10位、歳出に占める公債費割合も9,3%と低い方から7番目であり、比較的借金も少なく健全な財政と言えます。問題は、この強い財政力をどのように市民に返し、願いに応える使い方をしたかです。答えは、ノーです。

そもそも、私は24年度の予算案について反対した立場であります。その理由を振り返ってみると、第1は、災害への備え、防災のまちづくりを行政の土台に据えているか 第2に原発をなくし、自然・再生可能エネルギーへの転換とエコのまちづくりに本格的に取り組んだか 第3に いのち、暮らしを守ることを最優先の使命としているかという3つの観点から検証し、反対との結論を出しました。

さて決算ですが、同様の観点から24年度を具体的に振り返ってみます。

まず、これらの3つの課題を進める体制についてです。合併時の2007年との比較で、正規職員では330名の減、前年比では、55名の減となりました。コスト最優先の行政改革を強力に進め、職員を大幅に削減する中で、何が起こったか。昨年夏、現業からの任用替えの職員が、自らの命を絶ちました。詳しい事情は知る由もありませんが、行き過ぎた行革による職場環境の悪化は、過度なストレスを生み出し、多くの職員の心と体をむしばんでいます。自治体の目的は、住民福祉の向上にあることは言うまでもなく、最小のコストで最大の効果を生み出すことも当然求められています。しかし行き過ぎた削減は、結果的に市民に不利益をもたらすことになります。

震災からの復興と、景気低迷の中で、福祉の充実や災害への備えなど拡充が求められている分野にこそ、手厚い配置が必要です。しかし相対的にみると、職員が増えたのは建設土木分野に4人、福祉の分野では、生活福祉課で7名、民生分野全体では、3名の減となっています。生活福祉課では、7名増ですがこれでもケースワーカーは不足、国基準の80名を大きく上回る98名を担当しています。丁寧な自立、就労支援には圧倒的な人手不足です。

コスト削減ありきの保育所民営化、清掃部門や様々な出先機関の民間委託化や指定管理化、非正規化は、専門性も技術も継承されないばかりか、行政と市民との距離を遠くし、さらには官制ワーキングプアを増やし、地域経済からも若者からも活力を奪います。

そういった意味合いから、東日本大震災は、コスト削減ありきの行革路線を突っ走る宇都宮市政を転換する、第一歩とすべきです。

さて1点目の災害への備え、防災のまちづくりについては行政の土台となっていたか。  

東日本大震災から丸2年、防災対策費は、前年比で750万円の減。東日本大震災からの重要な教訓の一つは、地域での、住民一人一人の防災意識の高揚ではなかったか。地域防災マニュアルの作成は遅々として進まず、地域自主防災会への補助金がわずかに増えたものの、防災訓練は、すべての住民参加の規模では行われず、旧態依然としたままです。防災備蓄品の充実、備蓄避難所の設置は、一定進められたものの、十分とは言えません。震災直後のあの緊迫感はなくなっています。震災後に議会としてまとめた「災害対策調査特別委員会」の提言は、その多くが脇に置かれたままです。

また、県内の多くの自治体ではすでに100%となっている小中学校の耐震化率は、本市では85%、保育園 %、さらには、幼稚園や老人施設など、避難が困難な公共施設は、1日も早く市が責任をもって耐震化100%に進めるべきです。

ここでも、宇都宮市は、災害への備え、防災のまちづくりを行政の土台に据える姿勢は見えません。

2点目の観点は、原発をなくし自然・再生可能エネルギーへの転換とエコのまちづくりがどのように進んだかについて、見てみます。原発についての賛否は、地方自治体の首長は態度を明確にすべきです。自分の街には原発がないからと言ってその賛否を明らかにしない態度は、もはや自治体の首長として通用しません。それは、原発に代わるエネルギー革命に、真剣に取り組むかどうかという自治体固有の政策に直接かかわっているからです。24年度の地球温暖化対策費は、3億2,700万円余、一般会計歳入・約1,878億円のわずか0,17%にすぎません。宇都宮市は、福島第1原発の事故で、福島県に次ぐ放射能汚染被害を受けた県の県庁所在地、さらには、東海第2原発から50キロの自治体です。その首長が、原発の是非を明らかにすることも避け続け、自然エネルギーの普及にも本気度は見えない。これで本当に、市民の命と暮らし守れるのか。第3の観点からも認められません。

3に、市民の命と暮らしを守ることを最優先の政治になりきれていない点は、予算でも具体的に指摘した通りです。介護予防と言いながら年々減らしている生きがいデーサービス、質的にも量的にも不充分で、利用者負担の重い介護サービス、なかなか入れない特別養護老人ホームや保育所、高すぎる国保税、滞納すれば資格証明書、差押え、国言いなりで後退する一方の障害者施策など、待ったなしの福祉の課題は、山積みのままです。本市の財政力をもって真剣に取り組めば、こうした施策を大きく前進させることは可能です。

例えば、国保の運営でも全国どこでも国保法に基づいて自治体が保険者になって運営されていますが、とりわけ滞納者に対する扱いは大きく異なり、国民皆保険の精神を重視し、資格証明書は1通も発行しない自治体もあります。どのように解釈するかは、首長の判断や裁量にゆだねられているのです。

一般会計・特別会計合わせて3,600億円余、どこに優先的に使われたか? いのちと暮らし守ることを最優先とは言い難い本市の決算状況と言えます。

 以上2,012年度決算についての反対の理由を述べてまいりました。この討論が、新年度の予算編成にあたって、真に住民福祉の向上と住民自治の実現、将来を見据えた安全・安心で持続可能なまちづくりに生かされることを心から願って私の討論を終わりにいたします。

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