2013.10.1
荒川つねお議員の討論
市議会日本共産党を代表して、陳情第45号、宇都宮市立図書館への指定管理者制度導入の再検討・宇都宮市図書館協議会の設置に関する陳情について、その願意、陳情項目、ともに納得できる内容であり、不採択に反対、採択すべきとの立場から討論を行います。
市民にとって、図書館とは、人類の英知の宝庫であり、安らぎと交流・情報発信の場所です。また、図書館は人が育つ場であり、常に充実・発展が求められています。図書館は、全ての市民の学習を保障する機関として、無料利用の原則が貫徹されています。
ですから、図書館の指定管理者制度導入には制度的矛盾があります。
その第1は、図書館利用は無料であることになっているため、指定管理者の企業の収入は委託料のみです。図書館法は、入館料や図書館資料の利用に対するいかなる対価も徴収してはならないと規定し、文部科学省は、指定管理者制度であっても、このことの遵守を求めています。他の施設では、入館料や参加費、受講料などは、概ね指定管理企業の収入となります。従って、利用者を増大させるインセンティブが働きます。しかし、図書館の場合、他市で指定管理者となっている図書館流通センターの石井昭会長の言にもあるように、「図書館法には無料貸し出しの原則があるため、創意工夫の範囲は限られ、入館者が増えれば増えるほど赤字になる。全くうま味のない事業です」ということになります。
第2に、指定期間が存在するということは、とりわけ、今回計画されている市立河内図書館については、3年間という短期間では、長期的視野に立った運営が難しく、また、職員の研修機会の確保や後継者の育成等の機会が難しくなり、専門性の継続と蓄積を困難にすることです。
第3に、競争の原理が働かないことです。例えば、図書館は、利用者から求められた資料を確実に提供するために、資料の相互貸借を行うように、連携・協力=ネットワークの形成・発展を前提としています。ここでは、企業活動として必須の競争も必要とされません。以上の通り、公立図書館への指定管理者制度の導入は全くなじまないものであることは明らかです。
そもそも、指定管理者制度は、財界発案と小泉構造改革のもとで、「民にできることは民に」という号令のもと、2003年に、地方自治法が改正され、公共施設の運営を民間に解放する制度として導入されたことによります。そして、公園やスポーツ施設、福祉施設などに適用され、図書館も対象になりました。
しかし、図書館まで市場原理による民間の儲けの対象としてしまうことに対して、教育の事業を企業の営利活動に委ね、また、公教育の責任を放棄するものとの国民の批判が巻き起こったもの当然でした。そして2008年の国会審議では、指定管理者制度は「図書館にはなじまない」との大臣答弁があり、また、「指定管理者制度の導入には、弊害がある」との認識のもとに、適切な管理運営体制の構築をめざすことを求めた附帯決議もなされました。さらに、導入推進を図ってきた総務省が「指定管理者制度」の運用上の留意事項を出して、その行き過ぎをセーブするよう指示しました。
このような政府・総務省の動向の変化の中で、いったん導入したところで直営に戻した自治体が、島根県安来市立図書館をはじめ次々と現れています。人減らしを中心に、経費さえ節減できればどんな道を選んでもいいわけではありません。行政本来の使命を放棄しては間違った改革になります。図書館は、まず、直営こそが大前提です。市立図書館への市民の期待に応えるためには、質の高いサービス、支援を行うために、職員の公務員としての誇りと自己研鑽が不可欠であり、これによってはじめてエキスパートが育ち、後継者に技術・知識が引き継がれるのではないでしょうか。
ですから、中核市の中で、平成23年度までに、市立図書館に指定管理者制度を導入したのは、本市を含め、わずか4市にすぎません。それは、公立図書館についての理念と役割を、他の中核市が冷静にとらえた良識ある決断をしていることに他なりません。
宇都宮市は、平成23年度の南図書館に続いて、本年5月には、指定管理者業務仕様書や図書館業務分担、要求水準一覧を作成し、本年度に市立河内図書館への指定管理者制度の導入をすすめています。
先行した南図書館がうまくいっているかのような評価を出すのはまだ早計です。むしろ、図書館法の理念の上に立って、指定管理者制度導入の冷静な点検と見直しこそ、本市の図書館運営に求められていると私は考えます。
また、陳情者の言うように、市民の市立図書館運営への多様な思いや声をシャットアウトし、指定管理者制度導入への批判から逃れるがごとき、市立図書館協議会の廃止に至っては、いかなる理由、言い訳をもってしても、合理化できるものではありません。また、市立図書館協議会廃止について、市民に対しても、議会に対しても説明責任が果たされていないことも明らかです。これまで、重要な役割を果たしてきた市立図書館協議会は復活すべきです。
以上、市議会日本共産党は、市立南図書館に続く河内図書館への指定管理者制度導入は中止すべきと考えます。
それこそが、地方自治法第2条、地方自治体の目的は「市民福祉の増進」即ち市民の幸福感を増進することに合致することになると議員の皆さんに心から訴え、陳情採択へのご賛同をお願いしまして、私の討論を終ります。