2012.10.3

福田くみ子議員の「平成23年度普通会計の決算の認定について」反対する討論

 私は、日本共産党を代表して議案第92号決算の認定について反対の理由を3つの角度から述べてまいります。
 
 1の角度は、東日本大震災と原発事故からの復興と教訓をまちづくりにどう生かしたのか。まず、1つ目に復興支援の不充分さです。市内の2万棟にも迫る被災住宅への支援は、そのほとんどが1部損壊と認定され、たった1万円のみの罹災見舞い金のみ。実際には、1部損壊と判定された家屋でも、数百万円もの修繕費がかかり、1年が過ぎても手のつけられない被災住宅も目立ちました。様々な国の支援制度ではカバーできない被災者への支援を県内の多くの自治体が独自に行ってきた中で、本市の策のなさは、多くの被災者を落胆させました。

2点目に、地震は止めることはできませんが、その被害を政治の力で、減らすことはできます。23年度末、保育所の耐震化は、公立では3園、民間では16園が手つかずです。少なく見積もっても1000名を超える乳幼児が、耐震化されていない園舎で毎日生活しているのです。乳幼児は、お昼寝中に大震災が起きたら、ほとんど自分の力では逃げることはできません。小中学校の耐震化も、is0,62の清原中央小学校の大きな被害を教訓とするならば、is0,3以下に甘んじることなく精いっぱいに前倒しで進めるべきはなかったか。また、清原体育館のすさまじい被害状況から新たな課題として浮かび上がった、体育館の天井などの非構造部分の耐震化も補正での早急な対応が必要ではなかったか。これまた、動きの遅い国待ちとは甚だ遺憾です。お金がないから、国の様子を見てということではなく、命を守る対策を最優先とできるか、考え方の問題です。

3点目には、原発0をめざす立場が見えない点です。安全神話に翻弄された原発事故は、明かに人災です。放射能汚染への対応は、初めての経験でもあり試行錯誤しつつ進めてきたことは、一定の評価はしたいと思います。しかし、ここから何を学ぶか。一番大切なのは、原発事故は時間的にも空間的にも歯止めのかからない異質な事故であり、取り返しのつかない事故だという点です。この事実を謙虚に受け止め、原発事故から市民を守るには原発をゼロにするしかないとの立場にしっかりと立つことです。自ずと安全で再生可能なエネルギーへの転換は必然となってきます。しかし、本市は地域経済と産業の活性化にも有効な、自然エネルギーの普及と開発に、あまりにも消極的です。

4点目には、災害時に先頭に立って働く地方公務員の不足と非正規化の問題です。国の進める行革路線まっしぐらで非正規への置き換えを進めてきた結果、東北3県への支援もままならない状況でした。市民1000人当たりの職員数は中核市39市の中で少ない方から14番目で5,98人、全国平均の6,33人と比べても大きく下回っています。とりわけ消防職員の充足率は82,9%、生活保護のケースワーカーの一人あたりの担当人数は、標準の80人を大きく上回る102,8人です。これでは、命と財産を守ることも、充分な就労支援も期待できません。また、いじめや学力向上など大きな問題を抱え、高い専門性と豊かな経験が求められる教育の分野でも、直接教育にかかわる教員総数2,628名のうち県費、市費合わせて407名約15,5%が非正規職員です。こんどの震災でも、学校職員が避難所などで果たした役割は大きかった点からも非正規職員の割合は、あまりにも多すぎます。

2の角度は、自治体の一番の仕事は、住民福祉の向上にあり、その不充分さを指摘します。

1点目に、就学援助の切り捨ては見過ごせません。子どもの貧困が社会問題化する中、本市の就学援助は、適用基準を生活保護の1,5倍と定めて多くの親子を支えてきました。ところが、経済状況が良くなる兆しもない中で、この門戸を1,3倍に狭めたことで、34世帯51名の子どもたちが、制度から排除されました。僅か数百万円の出し惜しみではないでしょうか。しかも、宇都宮市の歳出に占める扶助費の割合は、22,1%で全国平均248%と比べても低く、就学援助費の切り捨てには、何の道理もありません。一人でも多くの子どもたちが、健全に育ち将来宇都宮を支える市民となってくれることへの投資と考えれば、最優先事項ではないですか。

2点目に、保育問題です。待機児童は年度末には244人、公立保育園の入所率は平均で116.2%、10月以降には、150%を超える詰め込み保育が当たり前になっています。「産休明けから職場復帰したい」、「やっと見つけた仕事は、来月からという条件でも保育園はすぐ入れない」、「自宅や職場の近くの保育園に預けたい」、こうした雇用や生活の実態とはかけ離れた保育園の受け入れ状況は、改善が必要です。

3点目に高齢者と障がい者の問題です。介護老人施設の待機者は214人で、とても不安解消にはほど遠い状況です。実態に追いつかない整備計画は、入所を希望しながら亡くなられるお年寄りにとっては、まさに保険あって介護なしです。

また、高齢者の外出支援や生きがいディサービス、介護度の低い要支援の人のサービスなどは、高齢者が自立して暮らし続けるためにも拡充が必要であるにも拘らず、抑制傾向にあるのは放置できません。今になってやっと重い腰を上げた重度心身障害者の医療費の自己負担をなくすことも、宇都宮市の財政力を持って23年度中に出来ないことはなかったはずです。

4点目に、宇都宮市の国民健康保険は、国民皆保険としての理念が貫かれているか問題です。新たな基準での一般会計からの繰り入れに踏み切ったことは、大きく評価するところですが、高すぎる税額引き下げに見合った一般会計からの繰り入れ額とは言えません。国保税の収納率が84,3%と圧倒的に低いのは所得のない人にも課税されることや、高すぎる税率に原因があります。2年以上滞納すれば、発行される資格証明書は、3,950件、加入者の約2,85%にあたります。いわゆる「悪質滞納者」との判断に、本当に間違いはないのか。一つ間違えば、命にかかわる判断です。申請減免制度や、一時負担金減免の適用範囲を広げるなど、低所得者対策の一層の拡充が求められています。広がる格差と貧困の中で、国民皆保険制度の理念が置き去りになっていることは見過ごせません。

さて、第3の角度は、こうした財源をどこに求めるか指摘いたします。企業立地補助金62000万、その効果も明らかではなく、到底認められません。費用対効果も期待できない若年夫婦世帯家賃補助7436万円、実働に見合わない行政委員の報酬、コンサルタント任せのまちづくりの各種計画策定費用、市政研究センターの破格の人件費等々の見直し、湯西川ダムの一般会計からの出資金3億5640万円、さらには水利権返上にも踏み切り、これまでの負担金返還も求めるべきです。

 こういった無駄を削り、いのちとくらしを守る事業の充実に充てるべきです。

 以上、3つの角度から決算を検討した結果、H23年度の普通会計の決算の認定はできないとの結論に達しました。

議員各位のご賛同で、新年度予算を名実ともに、住民福祉の向上予算とするスタートとしようではありませんか。以上を持ちまして、反対要論を終わります。


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