2012.3.23
福田くみ子議員
予算についての反対討論
発言通告に従い、議案20号、21号,22号の3つの予算について反対の討論を行います。
3.11の東日本大震災と原発事故は、これまでの日本の政治のあり方を根本から問うものとなりました。地域住民の意識、地方自治体に求める要求にも変化が生まれています。日本の社会と政治が直面している課題、住民の意識と価値観の大きな変化に応える地方政治とはどうあるべきなのか。それは、@災害への備え、防災のまちづくりを行政の土台に据えること、A原発をなくし、自然・再生可能エネルギーへの転換とエコのまちづくりに本格的に取り組むこと、Bいのちと暮らしを守ることを最優先の使命とする政治へ転換することにあると考えます。
はじめに、議案第20号一般会計予算について具体的に反対の理由を述べます。
まず、「3つの課題」を進める体制、つまり職員定数について、どのようになっているか。予算定数の比較では、合併時の2007年比で、非常勤職員なども合わせた職員数では、918名の減、一般正職員だけでも330名の減となっています。被災地では、救援と復興に先頭に立って大きな力を発揮したのは、消防をはじめとする多くの公務員でした。自分の家族や家を失う中でも、必死に住民の救援にあたる多くの公務員の姿がありました。それは宇都宮でも同じです。コスト削減ありきで必要なサービスまで削る職員削減はやめるべきです。また、民間委託化や劣悪な条件の非正規化では、専門性も技術も育たないし継承もされません。さらに、雇用危機の中で、官製ワーキングプアを増やし、少子化をより深刻化させることになります。具体的には、@消費生活相談員は嘱託職員の上、14名から13名に削減、A学校指導助手や学校司書は非正規雇用のままで待遇改善がない、B生活保護のケースワーカー、1人当たりの担当人数は96名で国基準の80名を大きくオーバーしているC消防力整備指針による消防職員の充足率は83%。今後も大震災の確率が高い中では、早急に定数を満たすべき、D保育所のこれ以上の民営化は、保育サービスの質の確保が困難になり、保育の公的責任の後退につながる、など問題点として指摘します。
さて、第1の課題・災害への備え、防災のまちづくりを行政の土台に据えることについてはどうか。MCA無線による連絡体制の強化、緊急メール配信サービスなど、危機管理体制の強化に1億876万円余が挙げられています。
しかし、これは、現時点での最大限の対策強化と言えるでしょうか。防災備蓄品や備蓄庫の配備については、認可外も含めすべての保育園・幼稚園児の安全に責任を持つべきですし、市内14か所しかない防災備蓄庫は、避難所に対応したものに再整備を急ぐべきです。自主防災会の活動費は、全ての住民参加を視野に入れた訓練ができる額に引き上げるべきです。耐震化では、保育園について予算化されているのは、6園だけで、年度末には13園が未実施の状況です。また、小・中学校の耐震化率は、84.7%。15.3%が残ることになります。保育園、小中学校の耐震化は、先送りすべきではありません。
こうした防災対策は、これまでの延長線上に留まらない規模とスピードが必要と考えます。先送りせず、最大限で臨むべきです。
次に「3つの課題」のうち原発をなくし自然・再生可能エネルギーへの転換とエコのまちづくりを推進する具体的事業について述べます。
エネルギー及びエコ関連予算は、再生可能エネルギーの利活用促進経費300万円、住宅用太陽光発電システム導入補助1億4400万円、環ISO普及経費155万円、幼児環境学習推進経費11万円などです。自然・再生可能エネルギーの本格的な導入と普及に向けての本気度が見えない予算です。
3番目の課題、いのちと暮らしを守ることを最優先とする政治への転換はどうか。重度心身障害者医療費現物給付、ふれあい収集事業、住宅改修補助制度、など部分的には評価できるものもあります。
しかし、ゼロベースからの見直しでは、保健福祉部門が1億8205万円と大きく削減されます。主な内容は、老人福祉施設整備補助金単価の引き下げ5800万円、障害者福祉施設整備補助金の市単上乗せの廃止2077万円、小規模通所授産施設運営費補助金の廃止1000万円などで、これらの削減は到底認められません。
最後に3つの課題を実現するには、予算の配分を大きく変える必要があります。市街地再開発事業や市庁舎の再整備、農業予算の中でも土地改良等の土木事業、不要不急の都市計画道路などは、再考あるいは先送りすることで約20億円を、また、新交通システム推進費、若年世帯家賃補助、企業立地補助金、各種イベント補助金の見直し、コンサルタント会社への各種計画策定委託の中止などで、2億円を生み出します。
それでも不足する分は、市民の命を守る災害対策を前倒しで整えるためであることを考えれば、特別な年の予算と考え、こんな時こそさらに30億程度の基金の取り崩しを行うことと残りは市債で賄うことは可能なはずです。
東日本大震災から1年、日本の社会と政治が直面している課題、住民の意識と価値観の大きな変化に応える地方政治の実現のため、大まかではありますが、大胆な提言も含め、議案第20号一般会計予算の反対の理由とします。
次に、議案第21号国民健康保険特別会計予算の反対の理由を述べます。重すぎる国保税の負担は、生活を圧迫し公的医療を受けにくくしています。民医連が実施した調査によると、経済的理由から受診手遅れとなり死亡した人は、昨年1年間で67人に上っています。これは、あくまで「氷山の一角」であり、全国で5500人に上ると推計される深刻な事態です。
こうした背景に立って、予算に反対の理由を3点、具体的に述べます。第1に、一般会計からの「新たな基準による繰り入れ」は、5億円余。少なくとも昨年並みの10億円に増やし、思い切った保険税引き下げをすべきです。第2に、低所得者に対する申請減免及び一部負担金の減免をきちんと適用させ、経済的理由による医療難民を生まない最大限の措置が取られていない点です。第3に、特定検診、脳ドック・人間ドックは、受診率を飛躍的に向上させるために、受診しやすい環境整備が求められています。予防を目的とした保健事業強化でこそ医療給付費を減らすべきですが、予算では、それが見えません。以上、国民皆保険の理念がいきる医療保険にすべきとの立場から反対の理由を述べました。
次に、議案第22号介護保険特別会計予算に反対の理由を述べます。介護保険制度は、「保険あって介護なし」の不十分な制度である点を前提としても、保険者である宇都宮市が、いのちと暮らしを守ることを最優先の使命とする立場に立てば、もっと良くなると考えます。
具体的には、第1に、第5期事業計画での改定保険料について、低所得者への軽減対策が不十分な点です。現行法の範囲内でも、第2段階の細分化により、低所得者のさらなる軽減が図れます。介護給付基金積立金の一部を取り崩せば十分可能です。第2に、特別養護老人ホームの整備計画の217床の増床計画は少なすぎます。これでは、待機者はなくなりません。3点目に、在宅医療・介護サービスの整備はあまりにも不十分です。「高齢者が住み慣れた地域で暮らし続けることを可能にする」ことを掲げ、在宅支援強化を看板にした介護報酬の改定は、強引に在宅化を促すばかりで、介護難民や介護殺人、虐待などの悲劇を増やしかねません。以上のような理由から、議案第22号介護保険特別会計予算は認定できないものです。