2012.3.23

荒川つねお議員

陳情第9号、公的年金改悪に反対する意見書提出を求める陳情について、可決すべしの立場から賛成討論

 私は、只今議題となっている陳情第9号、公的年金改悪に反対する意見書提出を求める陳情について、「委員長報告の通り、採択を」との立場から賛成討論を行います。

 野田政権は、「年金額が本来より高い水準になっている」といって、3年間で2.5%減らそうとしています。来年度はそのうちの0.9%分を減らす計画です。加えて、昨年の物価下落にともなう分として、0.3%の削減も行われます。あわせて1.2%、過去に例のない大幅年金削減が行われようとしています。

 これは、障害年金、障がい者、障がい児への手当、低所得者のひとり親家庭への児童扶養手当、被爆者の医療特別手当なども同様に下げられます。

 年金額は「物価スライド」といって物価変動に応じて改定されることになっています。これは、物価上昇で年金が目減りしないために導入されたものでした。そのため、物価が下がり始めた当初は、政府も年金引き下げはしませんでした。

 しかし、2004年に小泉政権が強行した年金制度改悪で、物価が上がっても、年金額を据え置く一方、物価下落時は減額する仕組みが導入され、引き下げが繰り返されました。

 その結果、2003年度から2011年度までで1.9%削減し、野田政権のもとで、過去に据え置いた分などをさらに削減しようというのです。

 しかし、もともと、年金の支給額に消費者物価指数を一律に当てはめること自体、実情を踏まえないやり方です。物価の下落幅が大きかったのは、デジタル家電など一部の品目で、高齢者の日常生活とは関係の薄いものです。

 物価スライドのもとになる消費者物価には、高齢者の生活を直撃している医療・介護の負担増や社会保険料や税金の負担増は全く反映されていません。

 例えば、1999年に年金を月15万円受けていた70歳、単身の男性で試算すると、この12年間で、税金、医療、介護保険料の負担が年7万円増えています。一方、年金額は1.9%、34000円減っている状況にあります。

 そもそも、日本の65歳以上の高齢者世帯の64%は年金だけが収入です。高齢者の大多数にとって、年金が唯一の生活の頼りです。

 野田首相が議長だった、政府の行政刷新会議の「政策仕分け」で、過去の年金額据え置きを「もらいすぎ」と攻撃しましたが、その水準は「もらいすぎ」と吹聴するようなものでは決してありません。

 老齢基礎年金を受ける約2500万人のうち、国民年金しか受けていない人が1/3829万人にのぼり、平均額は月49000円です。最も多いのは月3万円台の年金の高齢者です。

 また、65歳以上の単身者の食費・住居費・水光熱費など基礎的な支出は、平均月68000円(厚労省資料)で、これには、保健医療費・交通通信費は含まれません。基礎年金満額、国民年金40年加入で68000円では、医療費は賄えないのです。

 生活保護を受ける65歳以上の世帯は56万世帯を超え、被保護者の約45%を占めます。年金削減で、生活保護受給者を一層増やしかねません。

 政府やメディアの「もらいすぎ」との非難がいかに年金生活者の実態を無視した議論であるかは、どこから見ても明らかと考えますが、議員の皆さん、いかがでしょうか。

 今回の陳情にある、物価下落時に年金額を引き下げずに生まれた2000年度から2002年度の差額25%分が、当時、据え置きになったのは、「年金額引き下げは消費マインドを冷やし、景気に悪影響を及ぼす」ためでした。その後も長期不況などで、経済状況はますます深刻な状況が広がっています。こうした中で、公的年金は地域経済にも大きな比重を占めています。少し古いのですが、2005年の調査では、県民所得に占める公的年金の総額が10%を超える道府県は37にのぼり、厚労省2008年白書は、「高齢者を安定した消費者層にし、地域における消費をはじめとした経済活動に寄与すべき」と強調していました。

 年金額の切り下げは、高齢者の購買力を衰えさせ、地域経済に深刻な打撃を与え、景気をさらに悪化させる悪循環に拍車をかけることになることも明らかではないでしょうか。

 いま、最も市民がのぞんでいることは、年金額を切り下げることではなく、高齢者の暮らしを支える年金制度の改善・充実ではないでしょうか。本日の議場に入るまでは、この陳情の不採択をお考えの議員の皆さん、この陳情の態度決定にあたっては、ここは小異を捨てて大同につこうではありませんか。

 ご賛同を呼びかけ、賛成討論を終ります。

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