2011年9月30日

福田くみ子議員の反対討論

 私は日本共産党を代表いたしまして,議案第
103号決算について認定できない立場から討論を行います。
 さて,決算審査に当たって私は,平成22年度がどのような1年だったのか,市民は政治にとりわけ身近な行政に何を求めていたのか振り返ってみました。
 決算の数字からは,主な自主財源である市税収入のうち,法人市民税の収入が僅かに伸びたものの,個人市民税の減収,生活保護費の増大など,前年度以上に暮らしの大変さが増していることが読み取れます。
 また,宇都宮市が昨年11月にまとめた市政世論調査では,施策の満足度を問う質問で満足度が最も低かったのは,「商工業の活力を高める」が7.8%,次に「地域産業の創造性・発展性を高める」が,13.6%で2番目に低くなっています。福祉や教育,生活環境,都市基盤など他の分野では,ほとんどが30%から60%であるのに対し産業・経済についての満足度はこのように極端に低くなっています。
 さて,そこで産業・経済に関わる主な本市の事業と決算を見てみると,商工費約207億8,400万円余,前年比で,約5%,12億円の減となっています。労働費は,前年比で192%約2倍の67,900万円余となっています。
 商工費では、長引く不況で苦しむ,中小零細企業支援は,金融対策費が約50億円増加したものの,融資額は約6%、約118,000万円の減、件数では33,298件から3,209件へと89件の減となっています。銀行の信用保証と“市税滞納なし”というハードルは景気が冷え込むほどにことのほか高く,資金繰りが大変な零細業者には,なかなか利用できないのが実状です。また,中小企業対策費は4,000万円,約40%減となっています。地場産業の育成,地域経済を活性化する事業も前年同様の内容と規模で,積極的な創意工夫のあとは残念ながら見られません。
 労働費の主な増加は、国の下請けの短期雇用の緊急地域雇用特別対策ですが、1か月や最長でも6ヶ月といったその場限りの雇用だけでは,見通しは立たないのです。
 平成22年度の市内の負債額1,000万円以上の倒産件数は35件、前年度比で1.6倍です。それに加え,生活保護世帯は,前年比10.6%増の5664世帯。これらのデータからは,地域経済や雇用は悪化しており、暮らしは厳しくなっていると見られます。
 全国各地に広がり「地域経済のカンフル剤」として,その効果が明らかな「住宅リフォーム助成制度」の導入にいつまで足踏みしているのか,市長の言う「時代を先取りするスピードと思いやりのある市政運営」とは言いがたいものです。
 その一方で,どうしても看過できないのは,企業立地補助金です。年度末,震災直後の3月28日,ホンダ技研に対して,97,0502,380円の企業立地補助金が交付されました。
 市民オンブズパースンは、「産業の振興及び雇用機会の拡大」という補助金の目的に適合しない、効果も期待できない、そもそも補助金の対象とならない、などの理由から監査請求、訴訟にまで発展しているところです。
 この補助金は,その前年まで限度額が2億円だったものを5倍に引き上げ,大盤振舞されただけでなく,「企業誘致」という観点からも,企業自身の都合による必然的な事情によって、隣地である宇都宮市内テクノポリスへの事業拡大であること、さらに補助金の目的でもある雇用機会の拡大,経済活性化にも,その効果について市の説明は不明瞭なままです。
 大企業が伸びれば,やがてそのおこぼれで地域経済も中小企業も個人も良くなる―だから大企業へはケタ違いの補助金もケタ違いの優遇税制も当然という論理は,とうの昔に破綻しています。地域に目が向けられず,有効な経済対策が打てないまま,一方では,大企業への大盤振舞は,まさに国政の“焼き直し”であり,時代遅れと言わざるを得ません。
 次に,市民目線から見て,費用対効果や,優先順位の点で,必要のない無駄な支出について指摘をします。無駄な支出として,議員の海外視察費2,949,500円,費用対効果からも,まちづくりの政策としてもアンバランスで,ばら撒きとしか思えない若年夫婦世帯家賃補助金6,785万円,水あまりが明らかにも拘らず,湯西川ダムからの取水にこだわり,3億8,484万円余の一般会計出資金,などを指摘いたします。
また,マンション建設やホテル進出は,民間事業の範中です。馬場通り西地区,宇都宮駅西口第4B地区など、再開発事業の名を借りたゼネコンばかりが儲かる営利目的の大型公共事業に,市民の巨額の税金をつぎ込むことは認められません。市民合意のないLRTの導入をもくろんだ,「新交通システム推進室」,ブランド推進協議会というトンネルを使い広告宣伝会社にマル投げで,キャッチフレーズばかりが独り歩きの補助金も認められません。
 次に,市民の切実な暮らしの願いの観点から,具体的に述べます。
特別養護老人ホームの整備は,150床が新たに整備されたものの,入所待機者は22年度末で必要性が高いと認められる人だけでも482人申込者は、1,037人に上ります。実態との関係では、整備は大きく遅れ、保険あっても介護なしの状況が常態化しています。  
 
保育所の待機児童は,223人,入所率は124.3%と相変わらず定員を大きく超えての詰め込み保育で,子どもも保育士も悲鳴を上げています。1人親家庭でも,希望する保育所になかなか入れない事態に変わりはありません。命や暮らしを支える事業には、実態に見合った規模の取り組みが必要です。
 この不況の中で,とりわけ低所得者に負担の大きい国保税の滞納者への資格証明書の発行や,差し押さえは,本当に「悪質滞納者」に限られているとは言えず、保険料を払うと医者にかかれない低所得層へ窓口負担の減免が適用されないために医者にかかれない事態は広がっています。また,そうした人は生活保護の医療扶助を頼るしかない状況となっています。平成22年度決算の生活保護費は,123963万円余,前年比で12.26%増加,保護世帯は,5,664世帯前年比で10.6%増えています。最後の砦である生活保護がここ数年この勢いで増えていることは,とんでもない事態です。
 こうした悪循環を断ち切る為には、地域経済の活性化が欠かせません。最小の税金で最大の効果を上げるために、全力で知恵を絞ったのか。自治体が本気でこの仕事に取り組んだのか。残念ながらそうとは言えません。以上のような理由からこれらの決算は不認定との結論に至りました。最後に311日の東日本大震災と原発事故は,市民の生活をさらに追い詰め、価値観そのものを根底から転換することを迫っています。それは,経済効率最優先ではなく人と人との絆を大切にすることや、エネルギー浪費からの脱却など,復興と人間回復への取り組みの中で,国民の中からふつふつと湧き出ています。
 平成22年度の決算審査にあたっては、求められている価値観の転換を踏まえ、次年度予算に反映すべく、議員各位のご賛同を期待いたしまして討論を終わります。


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