2011年3月24日
荒川つねお議員の討論

 私は、日本共産党市議員団を代表して議案第20号 平成23年度宇都宮市一般会計予算、議案50号 宇都宮市図書館条例等の1部改正、議案56号 指定管理者の指定について反対の討論を行います。

 まず討論に先立ちまして、このたびの東日本大震災で亡くなられました方々には心からの哀悼の意を表します。被災された方々には、心からお見舞い申し上げます。日本共産党は、未曾有の大災害による救援と復興に国民的エネルギーを発揮しての取り組みを訴え、戦後最大の困難を乗り越えた先に新しい日本社会と経済の前進をつくりだすために全力を挙げます。また福島第1原発の事故は、最悪の事態を生み出しています。避難を指示された住民が、本市にも日を追って増えてきています。その救援にあたる市民の皆さんに心から敬意を表します。また現地では、自衛隊員や消防職員、警察官が被爆を覚悟で水を注ぎ込むところまで来てしまいました。私はこうした命がけの人たちの身を案じつつ、2度と人にこんな危険な仕事をさせることがあってはならないと念じるばかりです。

 それでは、討論に入ります。

 新年度予算案について、本日は4分野から反対の意見を述べます。

 第一に、国の新年度予算による地方財政計画との関連です。佐藤市長の予算編成の基本方針の冒頭でも触れられていますが、地方財政計画の実際は社会保障関係費の「自然増」を中心に、地方自治体の行政経費が増大するにもかかわらず、それに見合った財源保障が全くなされていないのが最大の特徴です。但し、地方自治体の新年度の財政運営、財政状況がどうかという点では、07年参院選以降の地方財源保障の手直しと一体でとらえることが大切です。この間の補正予算等で国が交付した雇用や子育て、地域活性化の各種の交付金、地方交付税の上乗せ措置などを活用した事業計画を進めることが可能となっています。

 その点で、地域経済活性化と小規模事業者の仕事興しの決定打である住宅リフォーム助成制度の創設に踏み切れなかったのはきわめて残念です。また社会保障費の自然増に脅え、就学援助制度について、これまで本市教育委員会が自他ともに誇ってきた生活保護基準の1.5倍という適用基準を1.3倍に切り下げて就学困難な児童・生徒救済の門戸を狭め、市の負担分を抑えようなどという新たな措置は言語道断であります。

 第二に、今回の大震災の教訓のもと、市民の安心・安全を守る防災都市宇都宮を創る視点から予算を見るとどうか。

 地震の発生は防げなくても、政治の力で被害を減らすことはできます。そこで、本市の消防力の根幹である職員の充足率はどうか。ゆきすぎた定員適正化のもと、職員は毎年削減され、83%の充足率に落ち込む有様です。学校耐震化では、地震に対して危険性の高いとされるIs0.3未満については完了し、前倒しでIs0.34までは予算化されました。しかし、清原中央小の例に見られるように、二次診断でIs0.62の中校舎も使用不能の損害を受けました。児童・生徒の命にかかわる予算措置は小成に甘んじることは許されません。せめて、Is0.4未満11校、23棟の耐震予算化の展望を新年度に示すべきです。そして、自分では避難が困難な保育園の耐震化については、公立、民間とも全く手をつけないのは怠慢です。また、3万戸を超える木造住宅の耐震化は、予算はつけても進みません。これは、かねて提案している様に、国からの耐震工事補助と住宅リフォーム助成を組み合わせて需要を喚起する等の政策の欠如であり、これらの抜本的強化なくして、防災都市宇都宮は実現できません。

 第三に、予算の良し悪しを見極めるうえで、「何が大切か」と言えば、まず、住民福祉の立場にしっかりと立っているのかという点です。市民の切実な要求である高すぎる国保税の引き下げに見合う一般会計からの繰り入れの増額、中学校3年生までの医療費の窓口無料化、陳情も出された僅か2,000万円で済む重度心身障がい者医療費助成の自己負担の廃止、待機者の解消に向けた特養ホームの前倒し建設、同時多発的生活交通の確保と高齢者外出支援の充実等に向けた予算化は、本市の財政力をもって十分可能であるにもかかわらず、それができないのは、お金の問題ではなく、福祉の心の軽さ以外の何ものでもありません。

 第四に、こうした市民の切実な願いの実現への予算化の財源をどこに求めるのか。

 それは、不要不急の大型公共事業や大企業に至れり尽くせりの補助金に大胆にメスを入れることです。また、真のスクラップアンドビルドに取り組むことです。例えば、国の予算においても、減税以外にも二重三重の大企業優遇策に、さらに地方自治体でも優遇を重ねる、費用対効果も不明な7億5千万円もの企業立地・拡大再投資補助金はきっぱりやめることです。水余りで必要のない湯西川ダムからは撤退し、一般会計出資金はなくし、水利権返上で少なくとも31億円は一般会計に返還を求める年度とすべきです。また、政策的に稚劣な若年夫婦世帯家賃補助金は廃止、議会費においても、税金を使った議員の特権的海外旅行は廃止、議員歳費は少なくとも3割の削減を行ってもいいのではないでしょうか。

 こうして、市民目線から1,8396千万円の予算にメスを入れるならば、その僅か数%を見直しただけでも、市民のくらし応援、福祉充実の市政へと大きく転換させることは可能であり、現予算案の認定は自信をもって不可とするものです。

次にJR雀の宮駅東口に新たに市立南図書館が設置され、指定管理者による運営を導入する議案ですが、これに私たちは反対です。図書館は、知識の宝庫であり、安らぎと交流 情報発信の場です。図書館はひとが育つ場、常に充実・発展が求められています。図書館はすべての市民の学習を保障する機関として無料利用の原則が貫徹されています。財界発案と小泉構造改革による指定管理者制度によって、図書館まで市場原理による民間の儲けの対象にしてしまってよいのでしょうか。2008年の国会審議では、「指定管理者制度は、図書館になじまない」との大臣答弁があり、また、弊害があるとの認識のもとに、「適切な管理・運営体制の構築」をめざすことを求めた付帯決議がなされました。さらに導入促進を計ってきた総務省が「指定管理者制度の運用上の留意事項」を出して、その行き過ぎをセーブするよう指示しました。この留意事項では、これまで強調してきた経費節減を一言も述べず、公共サービス水準の確保をまず上げ、導入に対する十分な説明や情報公開、委託料は適切な積算による賃金、待遇、雇用の確保を求めるなど19項目に及んでいます。それを個別、具体的に図書館の管理・運営に引き寄せて検討してみるとおのずと結論は明確です。図書館に指定管理者の導入は絶対になじみません。委員会での議案審議を通じてもこれらの問題への真剣な検討を経た導入決定なのか、納得のいく説明はありませんでした。図書館は長期的な視野に立った運営による継続性に基づいて教育の営み、社会教育の営みが求められている所です。僅か4年数か月の指定期間では、市民の学びへの充実した貢献の保障が期待できないことは明らかです。図書館は公設公営で運営すべきです。各議員の皆さんの良識ある態度決定を呼びかけ私の討論を終わります。


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