2010年10月1日 荒川つねお議員
私は,市議会日本共産党を代表して,議案第108号,平成21年度宇都宮市一般会計決算及び国民健康保険特別会計ほか18件の特別会計決算について「不認定」の立場から討論を行います。
平成21年度は,前年度に引き続き,長年の自民党政治の行き詰まりと構造改革の名による新自由主義の経済政策が,住民の福祉とくらしを破壊し,地域経済の担い手である中小企業,地場産業,農林漁業等に深刻な打撃を与え,地域間格差を拡大し,地域経済の衰退を加速させました。
こうした事態のもとで,宇都宮市政が市民のくらしと福祉を守る仕事をどう果たしたのか,平成21年度一般会計・特別会計の決算の歳出・支出済額2,764億1,087万5千円について,不認定に値する主な点について指摘をし,新年度予算案への反映を求めるものであります。
第一に,いま,市内の中小企業,自営業者の営業とくらしが深刻なもとで,地域経済の循環の核として,本格的な支援をし,雇用と仕事興しを図ることがきわめて不十分でした。その端的な例が,地域活性化・経済危機対策臨時交付金の使い方でした。本市には,7億9千万円が交付されました。市民センター等の自動発券機拡充に574万円,保育園・幼稚園へのAED配備に1,030万円,エコカー・太陽光・給湯器購入等の低炭素型地域活力創造事業に5億2,440万円,地上デジタル化対策の小・中学校テレビ購入等に2億3,790万円が使われました。これらのメニューはAED配備を除いて主に,経済的ゆとりのある市民向けの国などの補助金への上乗せ,市の既存事業との重複や経済的波及効果を全く生まない事業にのみ費やされたことは残念です。この交付金は,準交付税なみの自由自在に使えるものでした。文字通り地域活性化と地域経済への波及効果を重視したものにすべきでした。
例えば本市では,耐震対策の対象となる木造住宅が3万4千戸残されていますが,この1年間の耐震診断補助金は10件,耐震改修補助金はわずか7件の実績のもとで,この交付金の一部を活用した住宅リフォーム助成事業の創設こそ最も利にかなった使い方ではないでしょうか。また,大型公共事業から市民生活密着型公共事業への転換,中小零細企業と自営業者への発注率を高める分離・分割発注を進め,小規模工事希望者登録制度の活用を図ることも不十分。公契約における生活できる賃金をはじめ,人間らしく働くことのできる労働条件を保障する制度確立に無頓着でした。地域経済の土台の土台,地域商店街への振興と支援はさらにお粗末でした。市中心商店街に関する支援は至れり尽くせりなのに,地域商店街への補助金は商店街路灯電気料の30%,修繕費の10%,魅力ある商店街等支援事業によるわずかな補助金にすぎません。これでは地域商店街の再生はありません。防犯灯代わりの商店街街路灯への電気料の全額補助,プレミアム商品券を含む各地域商店街の活性化への挑戦には思い切った財政支援を求めたいと思います。
第二に,「住民福祉の機関」としての役割をきちんと果たすことができたのかについて,二つの特別会計を例に指摘します。
国民健康保険特別会計を見ると,高い国保税に平成21年度も資格証や短期保険証世帯が大量に作り出されました。本来なら特別の事由による,制裁を加えてはならない世帯の吟味も不十分なままです。また,窓口払いの困難な世帯に,国保法や条例で保障しているはずの窓口一部負担金減額制度についても,対象者がいても申請受理も適用も拒否しているのは,国保法違反です。国保は社会保障であるとの国保法第一条が忘れられ,市民の生命と健康を脅かし,国民健康保険事業の悪循環を更に増幅させた1年となりました。
10年目を迎えた介護保険特別会計ではどうだったか。
最も目立つのは高い保険料・利用料や国・県の方針を受けての介護サービス利用抑制の実態です。在宅介護における利用限度額に対する利用率は49%を割っています。要支援,介護度1の平均は41.7%です。栃木県は宇都宮市に対して,介護給付適正化方針を示し,そこでは,介護給付限度額に対して60%を超えるケアプランを作成した事業所を名指した一覧表を送りつけて,ケアプラン点検・指導を強制し,介護事業所をサービス制限の自己規制に追いやる事態を生み出していることは重大です。こうした中で,とりわけ,訪問介護や食の自立支援事業は,計画は右肩上がりなのに実績は右肩下がりの顕著な利用抑制を示しています。その結果,介護保険事業は,毎年膨大な黒字で,この10年間で基金が30億円に到達してしまいました。これは不当な貯めこみであり,高い保険料・利用料の負担軽減や独自の介護サービスの充実に回すべきものです。施設介護では,いくら待っても入れない特養ホームの入所待ちの解消に本格的に取り組むことは,保険者である市長の責任であることへの強い自覚を求めます。
第三に,不用不急の大型公共事業や費用対効果における,問題のある歳出について指摘します。
馬場通り西地区再開発など,本来民間活力で行うべきマンションやホテル建設に巨額の市民の血税を注ぎ込むこと,必要のないムダな湯西川ダム参画への一般会計からの出資金,テクノポリス開発への義務のないまちづくり交付金の投入,大企業・ゼネコン奉仕の,破綻しても懲りない時代遅れの宇都宮駅東口大開発やLRT先にありきに関する歳出等は最も認めることができません。費用対効果に関しては,4年に一度の議員の海外視察費は,成果のある・なしにかかわらず,議員特権として認められません。若年夫婦世帯家賃補助金,市民広場の指定管理料,小・中学校給食調理業務委託,市民の目から使い道を覆い隠そうとするブランド推進協議会への交付金,企業拡大再投資補助金などが上げられます。また,1日当たり17万6千円になるものもある行政委員の月額報酬制や,市政研究センター所長の週1日の勤務で月18万6千円の報酬は法外な歳出です。一方で,指導助手など市の非常勤嘱託や臨時職員等の官製ワーキングプアと言うべき低賃金は,一刻も早く見直すべきではないでしょうか。以上,平成21年度決算にこめられた市民の声と願いを代弁しました。
本市の財政力は,主な財務指標から見ても,中核市の中で確固とした力と地位を占めています。この持てる力を市民のために余すことなく発揮したならば,くらしと福祉の充実・地域経済の担い手である中小・零細商工業者の振興と仕事興しにもっともっと寄与できたはずです。
市長,市民は市長にとって顧客ではありません。市民は市政の主人公です。新年度予算編成に当たり,平成21年度決算にこめられた市民の声と願いを真摯に受けとめていただき,改革すべきは大胆に改革されることを求めまして私の討論を終ります。