2010.3.25荒川つねお議員

 日本共産党を代表して,反対討論を行います。

 まず,議案26号平成22年度宇都宮市一般会計予算について反対の理由を述べます。

 第一に,国の新年度予算との関わりで見てみます。

 昨年の政権交代により鳩山政権が発足したもとでの国の予算は,総選挙での国民の審判を反映した一定の前進面はありますが,国民の願った「自・公」の国民いじめの政治からの根本的転換に,踏み出すものになっていないのが大きな特徴です。それは@自公政権が続けてきた構造改革路線と決別できず,社会保障削減の「傷跡」を是正するものになっていないことAいまの経済危機から国民の暮らしを守り,日本経済を立て直すために,大企業の内部留保と利益を社会に還元させて,雇用・中小企業を守る有効な手立てが打てないでいることB軍事費と大企業・大資産家減税という,「二つの聖域」にメスを入れて,財源を確保し,庶民増税の不安を解消することができないでいることです。

 この観点から本市の新年度予算を見てみますと,例えば「歳入」の市民税は62億円余の減収予算ですがその内,法人市民税は49億円余であり,その中味は大手20社で36億円,全体の73%を占めています。これらの大企業は巨額の利益を上げても,欠損金繰越控除制度をはじめ,大企業・大資産家優遇税制に守られて,法人市民税でも社会的責任を果たしていません。これは,長引く不況の中,一生懸命働いて血の出るような税金を納税している市民にとって決して納得できる話ではありません。

 また,地方財政計画との関連ではどうか。例えば,職員定数削減の押し付けです。この間,小泉「改革」の一環として,「集中改革プラン」が国から地方に強要され,強引に進められてきました。その最終年度は今年度にもかかわらず,新年度も地方財政計画上の定員を,同じ規模で削減しています。本市では,この国の方針に忠実に従い,市民サービスの維持・充実のために必要な職員まで削減し,劣悪な労働条件の臨時・非常勤職員に置き換えるのは大問題です。この様な中で,国の基準では60名の職員を確保すべき生活保護ケースワーカーを,56名しか確保しない予算,子ども発達センターの正規医師の雇用など,専門職を配置する体制の貧弱さ,指導助手の待遇改善の放置,民間委託化の加速による官製ワーキングプアーの増大は,黙っていられません。

 また,保育制度に関わる国の予算では,子ども手当てなど子育て支援が強調される割には,保育予算の増加が少なく,認可保育所の新設のための予算は,まったく計上されていないなど,待機児童の解消はとても見込みないものとなっています。その中で本市の新年度予算では,私立保育園への増改築への助成で70名の定員増を見込むものの,新たな保育所の整備方針,整備計画に基づく新設計画は棚上げです。これでは若い子育て世代の保育ニーズには,とても応えきれません。

 第二に,市民目線から,新年度予算の問題点を具体的に指摘します。

 まず,中止または廃止すべきものとして,議員の海外旅行費,1日当たりにすると176千円に相当するものもある行政委員の報酬,市内ミニコミ紙への250万円もの広告料支出,費用対効果に欠け,政策的に稚劣な若年夫婦世帯家賃補助金,バンバ広場の指定管理料,水余りが顕著にもかかわらず,湯西川ダム取水にしがみつく一般会計出資金などを指摘します。

 次に,不用不急の予算として,再開発事業です。マンション建設やホテル進出などは,民間の事業の範疇であり,こうしたものに市民の巨額の税金を注ぎ込む,馬場通り西地区や宇都宮駅西口第4B地区への事業補助金は見直すべきです。

 また,企業誘致推進費として,ホンダに10億円の助成金を予算化しています。しかし,巨額の利益と内部留保をもつ超大企業のホンダが,わずか10億円に釣られて企業立地を決定する筈がありません。来るべくしてやって来る大企業に,こんなに至れり尽くせりの税金投入は認められません。

 次に, LRT導入推進室を新交通システム推進室に,組織・名称替えを行いましたが,委員会質疑の中で進める仕事も考え方も,従前と全く同じであることが明らかとなりました。この様な市民を欺く看板付け替えの予算は認められません。また,ブランド戦略の推進にあたって,市民の力を信ぜず,得体もはっきりしないブランド戦略推進協議会への交付金という,トンネルを通して市民の目をそらし、広告宣伝会社へ多額の委託料を流すことは認めることはできません。

 次に、私たち日本共産党は一般会計1,8122,000万円のわずか数%を組み替えれば市民の暮らしと営業を守る有効施策がもっとできると考えます。

 保険料納めて介護なし、入所待ちはもちろん、緊急時のショースティもままならない事態の中で、特養老人ホームなど介護施設の増設計画は前倒しで進め、積極的整備計画を立てるべきです。不足している市営住宅の新たな建設、中学3年生までの医療費無料化や、子宮頸がん予防ワクチンの助成を直ちに開始すべきです。県都宇都宮がこれら施策で県内の他市に遅れをとっていいのですか。

 また、地域経済の大元を支えている中小零細業者の仕事興しや地域商店街の振興について、融資や中心商店街振興だけに目を向けず、暖かい施策を展開すべきです。

 以上、こうしたきわめて不十分な予算の中にあって、一般会計から国保会計に法定外で新たに95千万余を繰り出すことになっています。保険証が奪われ、国保が人を殺す状況が生まれている中で、国保税値上げをとどめる予算措置に、ついに本市も踏み出しました。本市の財政力からすれば、国保税引き下げへの繰り出しも可能とは思いますが、この繰出金の市長の決断には拍手を送り、議案26

号に対する反対討論とします。

 つぎに、議案第56号、57号及び68号についてです。これらの議案は、「まちづくりと生涯学習を一体的に推進するため」の生涯学習センターとコミュニティセンターの再編という点で共通する問題として、一括して反対の理由を述べます。

反対の理由の第1は、社会教育法第3条に明記されている「国民11人が自己の人格を磨き、豊かな人生をおくることができるようその生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、その成果を適切に生かすことができる社会の実現が図られなければならない」という社会教育の目的と理念が、曖昧かつないがしろにされる点です。

反対理由の第2は、まちづくりと生涯学習を一体的に推進することは、行政主導の人づくり、ひいては「国策生涯学習」を行うための基盤づくりにつながると考えるからです。「安心安全のまちづくり」推進を装った国民保護計画に基づく地域防災会の活動をも含む市民活動と、本来の社会教育の目的や理念は、相いれないものがあります。あえて、一体的に進めることは、行政にとって都合のいい「ひとづくり」を進めるしくみづくりといえます。

本市では、これまでも公民館を廃止し、専任の社会教育主事をなくし、行政主導の生涯学習へとシフトしてきました。今回の、まちづくりと生涯学習の一体化への再編は、生涯学習の理念を弱小化させ、さらに行政主導を強める動きとして見過ごすことはできません。

 以上をもって討論を終わります。議員各位のご賛同をよろしくお願いします。