2010.3.25
荒川つねお議員
私は、市議会日本共産党を代表して、議案第123号平成20年度宇都宮市一般会計決算及び19件の特別会計決算について認定を不可とする討論を行います。
平成20年度は、とりわけ後半より、アメリカ発の金融危機の中で、本家本元のアメリカをしのぐ景気悪化が日本経済を覆いました。これは国民生活を徹底的に破壊しつつ、経済基盤を外需頼みにしてきた財界・大企業優先の構造改革路線のゆがみと破綻の結果でした。国民・市民に対しては、急速な雇用破壊と貧困の格差が耐えがたいレベルに達し、中小零細企業の営業と暮らしが大打撃を受けました。
こうした中での本市の20年度普通会計の決算状況についてです。
中核市41市の比較で、主な財務指標から見た場合、本市はどのようになっているでしょうか。財政力指数は1.095で3位、経常収支比率は10位、自主財源比率は7位、公債費負担比率は10位、市民1人当たり地方税収入額は第2位など、財政力は中核市の中でも確固とした力と地位を占めています。この本市の持てる力を市民生活を守る市政運営に余すことなく発揮することができたのかどうか。答えはノーであります。決算を既に済んでしまったこととしてではなく、これからの新年度の市政運営にきちんと生かすことが求められます。
そこで、まず第1に、政策遂行上の問題点を指摘したいと思います。
未曾有の経済悪化のもとで雇用を守り、内需の拡大が国政でも地方政治でも求められています。本市の公共事業政策の方向を大型公共事業優先から、福祉、暮らし、防災、環境など、市民生活に密着した社会資本整備重視に転換し、地元中小事業者の受注機会を広げ、地域経済の活性化と地域循環型の経済対策にシフトすべきでありました。
大企業奉仕の馬場通り西地区、駅西口第四B地区などの再開発への、市民の理解を得られぬ巨額の税金投入は認められません。また、少なくとも380億円もの建設費が明らかとなったLRT推進の見直しやJR
一方で、緊急性が求められている小中学校・保育園・公共施設の耐震化対策や維持修繕のための公共事業で、仕事興しに積極的に取り組む必要がありました。また、小規模工事契約希望者登録制度の活用、住宅リフォーム助成制度の導入、地域商店街振興・支援策など、市民の暮らしの土台を直接温める緊急経済・景気対策が極めて不十分でありました。
第2に、世界に例のない日本の首都のど真ん中に派遣村ができるなど、国民・市民生活がさまざまな分野で深刻な危機にさらされました。こうした中で、憲法第25条を市政の真っ正面に掲げて、市民生活を守り抜くために最善の力をまだ出し切っていません。
例えば国民健康保険の運営では、20年度国民健康保険税が実質値上げされました。高過ぎる国民健康保険税を払いたくても払えず、資格者証世帯や短期保険証世帯が大量につくり出されました。これらの制裁措置を収納率向上に役立つと錯覚をして、国民皆保険制度をみずから掘り崩す診療抑制が市民の命と健康を脅かし、国民健康保険事業の悪循環を増幅させています。一般会計からの法定外財政安定化支援の繰り入れがわずか1億5,000万円余というのは言語道断であります。また、納税が困難な世帯への申請減免の適用の少なさ、窓口支払いが困難な世帯への医療費一部負担金減免の適用が一件もされていないことは、国民健康保険法上からも許されません。
介護保険事業はどうか。一言で言えば、「保険料納めて介護なし」の実態が蔓延しています。特養老人ホームは、入所待ちで列をなし、いつになっても入れない事態。一般質問でも明らかにしましたが、生活援助サービスのローカルルールによる利用抑制や介護適正化事業のもと、利用限度額に近いケアプランを組むことは悪だとされ、利用者の立場に立ってまじめに取り組むケアマネジャーに、市の担当職員がパワーハラスメントを行う事態まで生まれた年度でした。利用抑制で介護給付基金をどんどんふやしながら、低所得者の利用料・保険料の負担軽減には見向きもしませんでした。
生活保護行政では、この間の北九州市などでの人権無視のやり方や派遣村の教訓を通じて大きく改善が行われつつありますが、まだ十分ではありません。これまでの構造改革路線のもと、市民が最も頼りにする福祉・医療の分野まで民営化、民間委託、企業のもうけの対象とされ、財政縮減最優先の効率的、括弧つきでありますが、行政運営が至上命題とされ、福祉の心が行政マンから奪われてしまっていることは重大です。この分野でも20年度決算から、市政に福祉の心を取り戻す決意を新たにすべきと思います。
その上に立って、特養老人ホームの入所待ちの解消、保育園の新設による待機児童の解消などに本格的に取り組むべきです。周知のように、憲法と地方自治法の目的は、国民生活の安定であり、社会保障・福祉の充実です。社会保障・医療・保健への投資による経済波及効果が大型公共事業よりも大きいことは明らかであり、本市の大型公共事業のむだや浪費にメスを入れ、社会保障・福祉型の経済・財政への転換を図る必要があるのではないでしょうか。
第3に、20年度決算について、費用対効果や大型公共事業以外の不要不急の歳出について指摘をいたします。
議員の海外視察、若年夫婦世帯家賃補助金、市民広場の指定管理者への委託料、小中学校の給食調理業務委託、学習内容定着度調査業務などの委託料、青少年の居場所づくり事業などは、費用対効果の側面から見直しを求めます。また、土地購入費における土地開発公社の塩漬け土地を八幡山公園用地取得として2億2,800万円、みずほの自然公園用地取得に4,300万円については、市民の暮らしにそぐわぬ情勢ぼけの支出であります。
また、衛生費における水道事業会計出資金のうち、1億4,600万円余が湯西川ダム建設負担金にかかるものとなっています。今、民主党政権のもとでむだなダムの建設見直しが行われようとしています。湯西川ダムは、治水の面でも、利水の面でも、屋上屋を重ねるに等しいむだなダム事業です。水道事業会計の決算審査でも指摘しましたが、本市の湯西川ダム負担金は、現在わかっているだけで119億円、市民1人当たり2万3,370円にもなろうとしております。ところが、平成15年の水需要予測の見直しの後、実績値との乖離は年々広がり、水需要予測の再見直し、水源構成の再見直しで湯西川ダムに参画する必要性をなくすことが可能です。一般会計からのこの支出は認められません。
以上、今回の討論は、未曾有の日本の経済危機のもとでの20年度決算に光を当てました。平成22年度の予算編成に当たり、大胆な政策転換を求めて討論を終わります。議員の皆さんの御賛同をよろしくお願いいたします。