2009930日 荒川つねお議員

 私は市議会日本共産党を代表して、議案第123号、平成20年度宇都宮市一般会計決算及び18件の特別会計決算について認定を不可とする討論を行います。

 平成20年度は、とりわけ後半よりアメリカ発の金融危機の中で、本家本元のアメリカをしのぐ景気悪化が日本経済を覆いました。これは、国民生活を徹底的に破壊しつつ、経済基盤を外需頼みにしてきた財界・大企業優先の構造改革路線の歪みと破綻の結果でした。

 国民・市民に対しては、急速な雇用破壊と貧困の格差が耐え難いレベルに達し、中小零細企業の営業とくらしが大打撃を受けました。

 こうした中での、本市の20年度普通会計の決算状況についてです。

 中核市41市の比較で主な財務指標から見た場合、本市はどの様になっているでしょうか。財政力指数は1.0953位、経常収支比率は10位、自主財源比率は7位、公債費負担比率は10位、市民一人当たり地方税収入額は第2位など、財政力は中核市の中でも確固とした力と地位を占めています。この本市の持てる力を、市民生活を守る市政運営に余すことなく発揮することができたのかどうか。答えはノーであります。決算を既に済んでしまった事としてではなく、これからの新年度の市政運営にきちんと生かすことが求められます。

 そこでまず第1に、政策遂行上の問題点を指摘したいと思います。

 未曾有の経済悪化のもとで、雇用を守り、内需の拡大が国政でも地方政治でも求められています。本市の公共事業政策の方向を、大型公共事業優先から、福祉・暮らし・防災・環境など市民生活に密着した社会資本整備重視に転換し、地元中小事業者の受注機会を広げ、地域経済の活性化と地域循環型の経済対策にシフトすべきでありました。

 大企業奉仕の馬場通り西地区・駅西口第四B地区などの再開発への、市民の理解の得られぬ巨額の税金投入は認められません。また、少なくとも380億円もの建設費が明らかとなったLRT推進の見直しやJR宇都宮駅東口大開発は、グループ七七八の計画破綻を待つまでもなく、中止凍結を決断するなど、各種大型公共事業から貴重な税金の浪費を押しとどめるべきでありました。

 一方で、緊急性が求められている小・中学校・保育園・公共施設の耐震化対策や維持・修繕のための公共事業で、仕事興しに積極的に取り組む必要がありました。

 また、小規模工事契約希望者登録制度の活用、住宅リフォーム助成制度の導入、地域商店街振興・支援策など、市民のくらしの土台を直接暖める緊急経済・景気対策がきわめて不十分でありました。

 第2に、世界に例のない日本の首都のど真ん中に派遣村ができるなど、国民・市民生活が様々な分野で深刻な危機にさらされました。こうした中で、憲法25条を市政の真正面に掲げて市民生活を守り抜くために、最善の力をまだ出し切っていません。

 例えば、国民健康保険の運営では、20年度国保税が実質値上げされました。高すぎる国保税に、払いたくても払えず、資格者証世帯、短期保険証世帯が大量に作り出されました。これらの制裁措置を収納率向上に役立つと錯覚して、国民皆保険制度を自ら掘り崩す診療抑制が、市民の生命と健康を脅かし、国保事業の悪循環を増幅させています。一般会計からの法定外財政安定化支援の繰り入れが僅か15,000万余というのは言語道断であります。また、納税が困難な世帯への申請減免の適用の少なさ、窓口支払いが困難な世帯への医療費一部負担金減免の適用が一件もされていないことは、国保法からも許されません。

 介護保険事業はどうか。

 一言で言えば、「保険料納めて介護なし」の実態が蔓延しています。

 特養老人ホームは、入所待ちで列をなし、いつになっても入れない事態。一般質問でも明らかにしましたが、生活援助サービスのローカルルールによる利用抑制や、介護適正化事業のもと、利用限度額に近いケアプランを組むことが悪だとされ、利用者の立場に立って真面目に取り組むケアマネージャーに、市の担当職員がパワーハラスメントを行う事態まで生まれた年度でした。利用抑制で介護給付基金をどんどん増やしながら、低所得者の利用料・保険料の負担軽減には見向きもしませんでした。

 生活保護行政では、この間の北九州市などでの人権無視のやり方や派遣村の教訓を通じて大きく改善が行われつつありますが、まだ、十分ではありません。これまでの構造改革路線のもと、市民が最も頼りにする福祉・医療の分野まで、民営化、民間委託、企業の儲けの対象とされ、財政縮減最優先の効率的(?)行政運営が至上命題とされ、「福祉の心」が行政マンから奪われてしまっていることは重大です。

 この分野でも20年度決算から、市政に福祉の心を取り戻す決意を新たにすべきと思います。

 その上に立って、特養老人ホームの入所待ちの解消、保育園の新設による待機児童の解消などに本格的に取り組むべきです。

 周知のように、憲法と地方自治法の目的は、国民生活の安定であり、社会保障・福祉の充実です。社会保障・医療・保健の投資による経済波及効果が、大型公共事業よりも大きいことも明らかであり、本市の大型公共事業のムダや浪費にメスを入れ、社会保障・福祉型経済・財政への転換をはかる必要があるのではないでしょうか。

 第3に、20年度決算について、費用対効果や大型公共事業以外の不用不急の歳出について指摘します。

 議員の海外視察、若年夫婦世帯家賃補助金、市民広場指定管理料、小・中学校の調理業務委託、学習内容定着度調査等の委託料、青少年の居場所づくり事業などは費用対効果の側面から見直しを求めます。

 また、土地購入費における土地開発公社の塩漬け土地を八幡山公園用地取得として22,800万、みずほの自然公園用地取得に4,300万円は市民生活の実態にそぐわぬ情勢ボケの支出であります。また、衛生費における水道事業会計出資金の内、14,600万円余が湯西川ダム建設負担金に係るものとなっています。

 いま、民主党政権のもとで、ムダなダムの建設見直しが行われようとしています。

 湯西川ダムは治水の面でも利水の面でも屋上屋を重ねるに等しいムダな事業です。水道事業会計の決算審査でも指摘しましたが、本市の湯西川ダム負担金は、現在わかっているだけで119億円、市民1人当たり23,370円にもなります。ところが、平成15年の水需要予測の見直し後、実績値との乖離は年々広がり、水需要予測の再見直し、水源構成の再見直しで湯西川ダムに参画する必要性をなくすことが可能です。一般会計からのこの支出は認められません。

 以上、今回の討論は未曾有の日本の経済危機のもとでの20年度決算に光を当てました。

 平成22年度の予算編成に当たり、大胆な政策転換を求めて討論を終わります。

 議員の皆さんのご賛同を宜しくお願いします。