2009.5.28福田くみ子議員
ただいま議案となっている議案第74号宇都宮市一般職の職員の給与に関する条例等の一部改正について、反対する立場から討論を行います。
さて、今回の議案は、人事院勧告に基づき国家公務員の期末手当及び勤勉手当の改正に準じて、本市の一般職員の平成21年6月に支給する期末手当及び勤勉手当の一部を減額するとともに、市議会議員、特別職員等の期末手当についても同様の措置を講じようとするものです。
日本共産党では、この議案について検討の結果、議案の第3条、第4条で定めた議員及び特別職の給与の減額については、賛成とする立場ですが、第1条一般職員及び第2条任期付職員の給与の減額については反対するものであり、結果的に議案第74号について反対することとしました。
アメリカ発の世界的な経済危機による深刻な生活破壊と雇用破壊が広がる中、政府の緊急経済対策は、入り口は大企業や大金持ちへのばらまき、出口は庶民に負担を押しつける消費税の大増税というものです。雇用対策も失業対策はあっても、雇用破壊を進める大企業に雇用を守る社会的責任を果たさせる強力な指導の視点はありません。そのような中で出された今回の公務員の給与減額の根拠となる臨時の人事院勧告は、異例かつ唐突な特例措置と言えます。
そこで、反対の理由を簡潔に述べます。
第1に、今回の給与削減の根拠となっている人事院勧告は、人事院が財界の雇用破壊・総人件費削減に屈伏し、今も春闘を闘っている中小企業の賃金や最低賃金の見直しを押さえつけ、一層の内需冷え込みをつくり出し、地場賃金・地域経済に大きな影響を及ぼし、賃金削減の悪循環をつくり出すものとなる点です。
この勧告の強行押しつけは、国・地方公務員、関連労働者を含めて、全国では約2,000億円の賃金削減となると推定されています。宇都宮市では、市職員などだけでも約3億円の賃金カットとなります。さらには、公務員の労働基本権が制約されたもとで賃金決定のルールまでもが無視される状況は、臨時・非常勤職員の賃金にも連動していく可能性があります。
さらに、人事院勧告は、公務員だけではなく、公務関連、農協、民間医療、福祉施設など労働者の約15%に当たる全国で約730万人に影響があると言われ、これに年金生活者を加えると2,000万人に影響が及ぶと言われており、その影響ははかり知れません。
第2に、今回の条例改正の根拠となる人事院勧告は、精確性・妥当性に欠けるものである点です。勧告は、民間準拠方式によって民間労働者の賃金を基準に作成されます。しかし、今回の調査は、民間給与の実態ベースの調査も行われず、回答があった2,017社のうち大企業を中心に極めて短期間に妥結したわずか340社、企業割合で13.5%、従業員割合で19.7%にすぎない企業の水準調査のみをもとに勧告が強行されました。報告でも人事院みずからが「精確性等、不確定要素がある」「改定状況は変動する可能性がある」と認めているものです。
第3に、この勧告は、財界の人件費削減方針と政府与党が総選挙を前に公務員バッシングを政治的に利用する動きに人事院が追随、屈伏し、中立機関としての役割を放棄したものであると言えます。議員立法での公務員の賃金削減を画策した与党の政治的意図に迎合し、労働基本権の代償機関という役割を放棄し、公務員の賃金決定ルールを無視した不当な勧告であると言えます。
本来、公務員も労働者であり、団結権・団体交渉権・ストライキ権などの労働基本権を保障する立場が貫かれなければなりません。同時に主権者である国民全体への奉仕者として、安心して意欲を持って公務労働に専念できる条件が保障されなければなりません。
しかし、我が国の公務員は、憲法に反し労働基本権が制約されており、公務員の賃金や労働条件は、労働基本権の代償措置と言われる人事院勧告制度を基本に決定されているのが現実です。さらに、公務員の労働基本権を制約したまま、能力や業績による賃金決定を行おうとする公務員制度改革は、人事院勧告が労働基本権を制約している代償措置というこれまでの政府側の方針や見解すら形骸化し、憲法や国際ルールさえ逸脱するものです。それに加え、政治的に公務員バッシングを利用しようとすることは許されるものではありません。
世界的経済危機に立ち向かい打開していく上でも、雇用を守り、生活できる賃金保障と、社会保障充実などの一人一人の暮らしを守る内需拡大型の経済システムへの転換が求められています。そのような中で、地場賃金と地域経済に大きな影響を及ぼす市職員の夏季一時金の0.2カ月削減は、地方分権の立場からも撤回すべきです。
以上、議案第74号のうち、1条、2条について反対する理由を述べました。議員各位の御賛同を求め、討論を終わります。