2008.12.25荒川つねお議員

 私は、日本共産党を代表して反対討論を行います。
 第1に、議案第151号宇都宮市保育所条例の一部改正についてです。
 これは、公立の御幸が原保育園を民営化し、廃園にしようとするものですが、これは単なる一園の民営化にはとどまらない大きな問題意識を持つところです。子供を安心して預けて働きたい。雇用や生活の不安が広がる中で、市民の保育要求は一層切実さを増しています。毎年4月の入所の申し込みにも希望者があふれ、本市でも40名もの待機児童が生まれ、年度末に近づくにつれ、百数十名にもふえています。乳幼児が保育に欠ける場合は、保育所において保育しなければならないという児童福祉法第24条によって自治体に保育の実施が義務づけられています。
 ところが、政府は、新自由主義の構造改革路線のもと、国と自治体による保育の実施と水準の確保や公費負担の責任をなくし、企業、民間任せの安上がりの保育を進める制度改変を急いでいます。この間にも保育基準をさらに緩和し、定員を超えた入所児童の受け入れ、短時間保育士の導入、近くに公園があれば園庭のない保育所も認める、運営費国庫負担金の廃止と一般財源化、専門職でありながら保育士の非正規化などを進めてきました。そして今、全国でも、宇都宮市でも公立保育園の廃止、民営化の嵐が吹き荒れています。
 本市においては、2006年に改定された市保育園の整備方針・整備計画で2015年までに公立保育園21園中15園を民営化、2園を廃園にする計画を推進中です。しかし、構造改革路線は、今、国民要求との間に大きな矛盾を生み出し、行き詰まりを見せています。保育分野でも、例えば東京都における市場原理にゆだねた保育所であるハッピースマイル認証取り消し事件、本市においては、東部の民間保育園による異常な保育の質の低下と児童虐待事件を発生させています。
 今、市民の願いは、保育園の役割である子供の発達保障と親の就労保障、とりわけ子供の発達保障である保育の質の維持・向上にあります。保育の質は、民間委託事業者次第ではなく、公立の長年培った経験と技術を子供たちのためにもっと活かすためにも、本市の保育園整備計画は抜本的に見直しを行うべきです。御幸が原保育園の廃園どころか、児童福祉法第24条に基づいて新たな認可保育園の新設こそ、市民の保育要求に合致するものであることを訴えて反対の理由とします。
 第2に、陳情第18号の不採択に反対の意見を述べます。
 本年8月5日から日本でも開始されたグーグルマップストリートビューサービスは、既に欧米で訴訟を含めて大問題となっています。このサービスは、無断で路上を通行している市民や車両を撮影し、個人住宅が密集する住宅地をくまなく撮影して、本人の同意なくこれをインターネット上に公開することによって、プライバシーの権利を著しく侵害する人権侵害の事業にほかなりません。
 また、学校周辺の道路などを詳細に映し出すことは、児童を対象にした犯罪を心配する保護者の不安を高めています。そもそもグーグル社が地域や住民に何の断りもなく生活道路に入り込んで、通行中の市民の姿や形、個人住宅などを車に搭載した高精度カメラで多角度から撮影しているのは、本人同意に基づかない個人情報の収集・利用に当たり、憲法違反の疑いもあります。
 陳情者がいち早くこれらの問題を本市議会に提起し、犯罪防止、プライバシー保護の観点から、網羅的に個人住宅等を撮影し、公衆に提供する行為を一定要件下制限する条例、または規制の制定、もしくはこれに準ずる施策の検討を求めたことは、まさに時宜を得たものではないでしょうか。
 不採択の理由について、報告以外にも、インターネット利用者はごく少数であることや市の生活安全条例があることなどを挙げていますが、それでは市民にも陳情者にも説得力を何ら持ち得ません。本市議会は陳情者の願意を真正面から受けとめて、東京都町田市議会が政府・関係機関に行ったような意見書提出や県や市などの地方自治体で規制できる手だてを検討することを求めるべきではないでしょうか。
 議員の皆さん、このグーグルストリートビューのはらむ重大性を看破し、市民の安全・安心、地域の安全を願い求める私たちの態度を議会内外に明らかにさせようではありませんか。陳情採択への御賛同をお願いします。
 最後に、陳情第19号社会保障関係費2,200億円削減方針の撤回を求める意見書の採択を求める陳情の不採択に反対の理由を述べます。
 自公政権は、2002年度以来、社会保障予算の自然増を毎年毎年2,200億円も削減する方針をとり続け、既に1兆6,200億円も削減してしまいました。その結果、国民の暮らしを支え、命と健康を守るべき社会保障が生活苦や将来不安を増大させる大きな要因にまでなっています。しかも、病気や失業、倒産などで生活が厳しくなり、高過ぎる保険料を払えなくなると保険証が取り上げられるなど、低所得者が真っ先に社会保障制度から排除されています。介護保険も改悪され、介護サービス抑制や特養ホーム不足など、介護難民が生じる事態、医療制度の改悪で医療難民の事態が生じています。社会保障が貧困と格差を是正するどころか、拡大する事態を生み出しています。
 社会保障制度は、国民が安心して暮らすことができるための最後のセーフティネットです。行き詰まった社会保障削減路線とは一刻も早く決別し、2002年度以来の削られた1兆6,200億円を復活させるなど、抜本的な政策転換が急がれているのではないでしょうか。麻生内閣は、2009年度予算財務省原案で、表向きはこれまでの削減路線を堅持する旗をおろしませんでした。しかし、実質の削減幅は230億円に圧縮されました。財務省原案は深刻な矛盾に満ちた内容となっています。
 これには自民党国会議員からも「冷房を入れながら暖房を入れるものだ」との声が上がっています。国民の強い批判と怒りの世論を恐れたこんな姑息な一時しのぎは許されません。委員会の審議では、「財源全体の中で考えるべきだ」と不採択の理由を述べた委員もいました。しかし、皆さん、ばらまきは一瞬、増税は一生の定額給付金に2兆円、在日アメリカ軍への思いやり予算が1,928億円はあっても、国民への思いやり予算はないというのでしょうか。
 栃木県の医師会は、意見広告を皆さんも見たと思うんですけれども、下野新聞の一面を割いて、安全な医療、安心な医療、あなたの生命を守るために、第一番に社会保障費2,200億円削減の即時撤廃を訴えております。まさにこの意見書は今が旬であります。この意見書をしっかりと国に上げ、国民が安心して暮らせる、こういう政治へと切りかえていこうではありませんか。この陳情の採択に議員の皆さんの御賛同を心からお願いいたしまして、私の討論を終わります。