2008.3.25福田くみ子議員
日本共産党を代表して、議案第25号平成20年度一般会計予算とそれに関連する第26号、第27号、第29号について、反対討論を行います。
かつて小泉内閣では、構造改革路線のもと、痛みの向こうには明るい未来があるかのように国民に次々と負担を押しつけてきました。それを継承する安倍内閣、そして、福田内閣は、国民のノーの声に耳をかさず、ごり押ししてきました。明るい未来は来たでしょうか。
年間で3万人を超える自殺者、大企業では史上最大の利益を上げながら、労働者を物のように使い捨てにする派遣労働の広がり、年収200万円以下のワーキングプアは今や若者の3人に1人、家計を圧迫する原油や諸物価の高騰、また、輸入緩和と農家つぶしの政策による食料自給率の低下は食の安全を脅かしています。そして、格差と貧困の広がりに一層の拍車をかけてきたのが弱者切り捨ての冷たい政治です。大企業が国際競争に打ち勝つことこそが国民の幸せにつながるという欺瞞はもはや破綻したと言えます。完全に信頼を失った年金問題、今度は健康と命を守る医療政策の失敗に、国じゅうが救急医療や産科医不足となり不安が広がっています。
さらにこれに追い打ちをかけるのが、お年寄りを医療から締め出す後期高齢者医療制度です。かつて日本はお年寄りを大切にする国でした。喜寿、米寿、卒寿、白寿、みんなで長生きをお祝いしたのです。こんな弱い者いじめの政治は進めるべきではありません。今こそ、政治を大企業優先から市民の暮らしと家計優先に根本から切りかえていく努力を地方から大きく進めていくときです。
さて、新年度宇都宮市の予算案は、一般会計・特別会計・企業会計合わせて3,098億円余、果たして市民の願いにこたえる予算となっているでしょうか。日本共産党市議員団では、こども医療費無料化制度や妊産婦健診助成制度の拡充などは、これまでの多くの市民の声にこたえたもので、大きく評価できるものの、全体の予算配分は、市民の理解を得られるものではなく、認められないとの結論を出しました。
その理由の第1点目は、道路特定財源と暫定税率の是非が焦点になっているとき、これまで以上にその財源を当てにした予算編成になっている点です。
市税収入の増加が見込まれるとはいえ、一般会計・特別会計・企業会計の合計では7.3%の減の中、土木費は11億7,000万円余、4%の増、306億円余の積極予算です。その中でも道路橋りょう費は約16億円、24%の増になっています。暫定税率がなくなった場合、最大39億円もの減額を試算しておきながら、このような増額予算は理解しがたぃと言えます。まさに道路だけは特別扱いです。
「宇都宮市にはむだな道路などない」と言う人がいます。はなからそう言い切るようでは市民の願いは届きません。医療や福祉、教育の充実を願う声が大きいのは市政アンケート調査でも明らかです。限られた予算をどのように使うのか。まずは一たんすべてを同じテーブルの上に載せ、優先すべきものは何か検討するための一般財源化です。今や国民的となった一般財源化の声に対する挑戦的な予算は見直すべきです。
2点目に、相も変らぬ大企業優先の、市民生活は二の次予算である点です。
市民生活がこれだけさまざまな分野で追い込まれているにもかかわらず、宇都宮市では旧態依然とした大企業に奉仕をする再開発に莫大な税金をつぎ込み続ける予算になっています。馬場通り西地区再開発では、24階建てのマンションに今なお多くの市民の理解は得られていません。ここに既に7億3,000万円、さらに来年度は2億7,000万円、総額では国・県・市合わせて全事業の2分の1、35億2,000万円の税金がつぎ込まれます。また、駅西口第四B地区再開発には、ホテルとマンションの建設に6億1,400万円もの投入予定です。民間のお金もうけの事業に莫大な税金をつぎ込む時代ではありません。駅東口整備事業では、これまでも指摘してきたとおり、身の丈に合った利用しやすい駅であることが重要であり、呼び込み型の巨大なコンベンション施設や豪華なホテルなどは過大な負担となることは明らかで、もっと簡素なものに根本から見直すべきです。
3点目に、市民の身近な暮らしの願いにこたえた予算ではないという点です。
まず、国民健康保険税の引き上げです。医療改革法が実施に移されるもとで、医療荒廃は深刻さを増しています。医師不足による救急患者の受け入れ拒否や産科医不足が進む中で、資格証明書や生活保護世帯の人はさらに医療が受けにくくなっています。ガソリンの値上げやそれに伴う諸物価の値上げが暮らしを直撃する中で、いかなる形であっても保険税の引き上げは容認できるものではありません。むしろ、一般会計からの繰り入れを大きくふやして保険税の負担は軽くすべきです。
国民健康保険の加入者は市民の約3割、そのうち高過ぎて税を滞納する人の割合が3割を超える事態は、憲法第25条に規定された健康で文化的な最低限度の生活を保障するための社会保障制度であることを根本から崩壊させるものです。既に多くの中核市では、一般財源からの思い切った繰り入れで保険税を抑えています。一般財源からの繰り入れは不公平だとの理由はもはや成り立ちません。
2つ目に、高齢者の介護保険と高齢福社の問題です。長生きは医療費のむだと言わんばかりの後期高齢者医療制度の導入で介護の問題はますます深刻になります。市政に関する世論調査でも、2003年以降は高齢者福社の充実が最も重要だとする声が第1位を走り続けています。国の言いなりでサービス抑制に手をかしたり、公的な役目を投げ捨て民間丸投げの包括支援センターのままでは、介護保険の充実は望めません。直面する問題では、介護職員の確保や労働条件の向上のための支援も急がれています。孤独死への具体的な対策も重要です。
3つ目には、学校教育の充実です。これは世論調査では、充実してほしい施策の第2位となっています。新年度小中学校の普通教室に冷房が入ります。しかし、もっと急がれているのは人的な充実ではないでしょうか。教育のかなめは人材です。正規の教師をふやし、1クラスの人数を少なくすること、これが学校教育の抱える当面の課題を総合的に解決する一番の近道です。
4つ目に、公共交通の充実はもはや喫緊の課題です。バス路線の相次ぐ廃止で市民の交通権は縮小の一途です。コミュニティバスやデマンドタクシーの全市的な導入が急がれています。しかし、50万都市でわずか7,800万円しか予算化されておらず、本気度は感じられません。
さて、4点目の理由は、緊急かつ避けて通れない重大課題に正面から向き合わない予算である点です。
地球温暖化対策は既に待ったなし。緑化保全、エネルギー対策など、CO2削減目標との関係では余りにもお粗末です。また、農業の問題も、食料自給率アップ、農家つぶしの政策に苦しむ農業経営の支援、地産地消のさらなる推進など市独自にでも急いで進めるべき重要課題です。
5点目に、行革路線の中で正規職員を削減し、安上がりの非正規雇用の職員で補うやり方は、官製ワ―キングプアを生み出す目先ばかりの予算です。
雇用期間が1年以内の臨時職員は日額5,700円、年額143万円の標準額で算出すると503名を雇用していることになります。標準額が月額17万2,000円、年額206万円の非常勤職員は1,423人です。合計で約2,000名弱。教員免許を持っていながら指導助手は非常勤職員です。一般事務よりは少しよいものの、1年契約で年度末ぎりぎりまで次年度の雇用のめどは立ちません。専門職でありながら、これでは専門性を磨くどころではありません。官製ワーキングプアをつくり出している市の責任が問われます。
以上で私の反対討論を終わります。