2008.3.5福田くみ子議員

 発言通告に基づき、道路特定財源の確保に関する意見書案に反対する立場からその理由を述べます。
 そもそもこの制度は、今から54年も前、1954年につくられた制度です。当時は、国道・県道の舗装率が5%以下で、整備を急ぐためには安定した財源が必要との理由でした。1974年からは、ガソリン税などには2年間の特別措置として本来の税率より上乗せした税率、暫定税率が課せられました。ところが、暫定税率と言いながら5カ年計画の期限が来るごとに延長され、今日まで30年以上も続いています。この暫定税率の堅持とその大もとである道路特定財源の堅持を求めることは決して市民の利益にはつながりません。
 その理由の第1は、この制度が無駄な道路をつくり続ける自動装置になっているという点です。また、これを加速させているのが暫定税率です。そして、一方で、必要な生活道路の整備や福祉や暮らし、教育にお金が回らなくなっているのです。道路特定財源が自動的に入るために際限なく高速道路や地域高規格道路をつくる計画、これは、昨年末に政府与党が合意した道路中期計画です。
 これは、2008年度から10年間で59兆円を使うことになっています。この4割以上が国際競争力の確保を名目にした高速道路です。生活道路とは関係なく、大企業が輸出を進めるのに便利なようにくまなく高速道路で結び、空港や港湾からインターチェンジまで全国どこでも10分以内に行けるようにするという計画です。この計画は、今でも12分で行けるところまで対象にしています。また、地域高規格道路では、第2アクアラインと言われる東京湾口道路や和歌山と淡路島を結ぶ紀淡連絡道路など、日本列島を巨大な橋で結ぶ6つの大型計画も含まれています。
 このような莫大な予算を使う計画は、1987年の中曽根内閣が閣議決定した第4次全国総合開発計画がもとになっています。バブル時代の発想で採算性が問題視されているものです。このような基幹ネットワーク整備に道路中期計画の59兆円のうちの4割、24兆円が充てられています。道路特定財源が一般財源化されれば、このような大型事業の無駄が見直されることで必要な道路整備にお金が確実に回ることになります。
 また、今回の意見書では、防災対策、通学路の整備やあかずの踏切対策、救急医療などを欠かすことのできない道路整備としています。しかし、道路中期計画の中では、防災防雪対策に2.5%、通学路の整備にはたったの4%、バリアフリー化に2.3%しか計上されていません。また、5年間で1割も減っている救急病院へのアクセスの確保が必要と言うなら、むしろ病院こそつくるべきではないでしょうか。道路をつないだ先の病院がなくなれば元も子もありません。生活に必要な病院や学校、郵便局をつぶしておいて、なくなったからといって高速道路でつなぐというのは、道路だけ栄えて地域は滅ぶやり方です。
 2つ目の理由は、道路特定財源という仕組みは、地方分権と地方自治の推進に大きな障害となっている点です。道路特定財源は、地方自治体が公共事業を通じて国に依存する中央集権的な構造を財政的に裏づけてきた仕組みと言えます。地方自治体の財政が苦しくなっている中、福祉や暮らし、教育も切り縮められています。道路だけ特別扱いする道理はありません。すべてを同じ土俵に乗せて何を優先すべきかを考えるべきです。一般財源化すれば地方の裁量で自由に使うことができます。一般財源化し、少子化対策や医療、福祉など、地方が自由に使えるようにした方が地方の活性化に有効です。
 意見書案によれば、暫定税率が廃止された場合数十億円規模の減収が生じるとありますが、一般財源化することで無駄な道路建設をやめれば、新たに自由に使える財源が生まれます。必要な道路であれば、新たに生み出された一般財源をそこに回せばいいことです。今こそ道路特定財源という仕組みを大もとから断ち切った上で、真に国民の利益に立った仕組みを構築すべきと考えます。
 以上、道路特定財源の確保に関する意見書案に反対の理由を述べてきました。
 最後に、先日の東京新聞に「道路特定財源をどう見るか」というインタビュー記事がありました。一部を御紹介いたします。前鳥取県知事の片山さんが答えています。そこにはこんなやりとりがあります。「こんな調子で地方分権はできますか」という質問に対して「できませんよ。小泉さんが分権と言ったら、地方も分権、分権。もっと自由をよこせ。今度は総務省と国交省が特定財源って言うと特定財源、特定財源。縛ったままにして、でしょ。一貫しているのは権力者の言うことを踏襲していることだけです」、こういうふうに答えています。これでは政治はよくなりません。地方分権の推進と住民の利益最優先の立場に立ち、議員の皆様の良識ある御判断を期待して討論を終わります。