2007.9.28福田くみ子議員
私は、日本共産党を代表して、議案第165号、議案第171号に反対の立場から討論を行います。
まず初めに、第165号、2006年度一般会計及び特別会計決算について反対の理由を述べます。
さて、2006年という年はどんな年だったでしょう。小泉政権が強力に進めてきた構造改革路線によって格差と貧困が広がり、耐えがたい痛みは、とりわけお年寄りや障がい者など弱い立場の人々に重くのしかかりました。2006年には、公的年金控除の縮減、老年者控除の廃止、老年者非課税制度の廃止により増税となったお年寄りは、本市で延べ4万5,000人、約8億円の負担増となりました。さらに、定率減税の半減により、全体で20万人、約12億円の負担増も加わり、市民の暮らしを直撃しました。介護保険法の改悪、国民健康保険税の増税、それに続いて障害者自立支援法の施行など、弱い者いじめのオンパレードではなかったでしょうか。
こんなときこそ、市民に最も身近な市政は、命と健康、暮らしや営業を支える必要があったのではないでしょうか。本市の場合、そのような立場に立って税金が使われてきたかというとそうではありませんでした。
まず第1に、この間の負担増のターゲットとなってきたお年寄りに対してどうだったでしょうか。国が決めてしまった介護保険法改悪により、施設介護における食費、居住費の自己負担化、軽度の要介護者へのサービス切り捨てが強行されました。これにより、訪問介護や通所介護、電動ベッドや車いすなど福祉用具の貸与、療養介護等のこれまでのサービスが使えなくなる、こういう事態が大きく広がりました。
それに加え、本市では、介護保険料が6段階になったとはいえ、平均で28.4%も値上げされました。多くの自治体では、介護保険法改悪による負担増やサービス低下を避けるために独自策を設けてきましたが、本市の場合は7億円余りの不用額を残しながら、独自の手だてはほとんど打たれませんでした。また、多くのお年寄りに喜ばれていた生きがいデイサービスは、前年比で6割弱にサービスが抑制されました。ひとり暮らしのお年寄りや老人世帯がふえている中でも、緊急通報システムも前年比で7割弱にとどまり、その普及率は中核市32市中22位という低さです。こうした本市のお年寄りに冷たい市政は、地方自治体の役目を投げ捨てたも同然です。
第2に、我が国にとって命題とも言える、だれもが安心して子を産み育てられる社会の実現という点で本市はどうだったでしょうか。こども医療費無料化制度は、30年以上の長きにわたるお母さんたちの運動が実り、全国でも大きな流れとなっています。県内でも、県の制度に上乗せして対象年齢を拡大している自治体は17市町に上ります。本市における3歳までの現物給付は評価すべき前進と言えますが、一方での就学前までの子供の自己負担の導入は、県都宇都宮としてあってはならない後退です。子育て支援策の全般を見渡しても、子育てサロン事業、ファミリーサポート事業等、そのほとんどが前年度実績を下回っている現実を見ると、子育て支援に向ける本市の本気度は、市民の願いとかけ離れて余りにも貧困としか言えません。
青少年の居場所づくりは、これまで多くの議員も取り上げ、本市の青少年健全育成計画や次世代育成支援計画の中にも位置づけられています。この事業に使われたお金は、2006年度はわずか70万円。いつになってもこの事業への熱意も、拡充の方向性も見られないのは残念です。
次に、環境を守る施策です。CO2の削減は喫緊の課題です。しかし、グリーントラスト推進、住宅用太陽光発電推進補助金など、自然環境保全費や環境政策費、緑化推進費には数千万円しかかけないのが本市の現実です。開発による自然破壊の勢いに、環境を守る政策が全く追いついていない現状は見過ごせません。
さて、皆さん、このような耐えがたい市民の痛みや喫緊の課題に対し、有効な手だてが打てないほど本市の財政は逼迫しているのかというと、そうではないということを、中核市36市の比較で見てみました。本市の財政力指数は1.029で、豊田市、岡崎市に次いで第3位、経常収支比率は84.0%で第5位、自主財源比率70.8%で第5位、義務的経費比率46.4%で第8位など、財政基盤は比較的強く、安定し、弾力性に富んでいる優秀な自治体であることがわかります。
一方で歳出はどうか。これも中核市との比較で見ると、歳出に占める扶助費の割合は15%で28位、1位の東大阪市28.1%と比べると2分の1強です。また、同じく普通建設事業費の割合は18.4%を占め、第7位と高位に位置しています。これらの比較から、本市は、建設事業には熱心だが、強く弾力性のある財政基盤がありながらも、社会保障費などを含む扶助費には大変財布のひもがかたいのが見てとれます。現に2006年度に行われた建設事業では、馬場通り中央地区及び西地区再開発事業には14億円余り、宇都宮城址公園整備には8億円など、必要も緊急性もないこれらの事業には、けた違いの税金が注ぎ込まれました。
年々厳しさを増す地方財政の中でも、他中核市との比較では優等生である本市が、暮らしと命、健康を守り、子育てや環境を守るといった切実で重要なサービスや事業が、本市よりも財政基盤の弱い都市よりも低い水準にあることに納得できないのです。
以上のような理由から議案第165号には反対といたします。
次に、議案第171号あずま保育園の廃止についてです。
今回のあずま保育園民営化の反対の理由は、大きくは、第1に、民営化方針そのものへの反対と第2に、今回の選定方法についての2点から述べたいと思います。
第1に、民営化方針についてです。計画の中で、行財政改革の一環として効率的・効果的な対応が可能な保育環境の整備を行うとし、民営化によって市の財政負担の軽減と受託者の機動性・効率性が発揮しやすい運営を可能とするためとしています。保育園運営費の多くは人件費です。機動性・効率性を公立保育園に求めることができず、民間保育園にだけ求めるなら、それは必ず人件費の削減という形で実現されることになります。つまり、保育の質のかなめとなる保育士の賃金や労働条件の低下は免れません。
内閣府の調べによれば、公立と私立の保育士の賃金の比較では、公立では平均月給が30万1,723円に対し、私立では21万3,950円となっており、その格差は約9万円、私立は公立の約7割の月給です。また、勤続年数でも、民間は30歳未満が56.8%で、多くが5年以内でやめています。多様な保育ニーズや児童虐待など、新たな対応が求められている中で、保育の専門性はさらに高いものが求められています。保育の質の低下は、本市全体の子育て環境の低下につながるものと考えます。
第2に、今回の選定方法は、我が党の荒川議員が昨年9月の一般質問でも指摘したとおり、選考委員会のメンバーも、選考過程もすべて密室で行われ、公正・公平性が保たれたという保証はどこにもありません。市民の貴重な財産が譲渡される限り、市長は市民のだれもが納得のできる説明をする責任があります。一度ならず二度、三度きちんとした説明がされない、ガラス張りにできない民営化の選定方法は認めるわけにはいきません。
以上、議案第165号と第171号について議員各位の御賛同を求め、反対討論といたします。