2007.3.23荒川つねお議員

 日本共産党を代表して、議案第29号平成19年度一般会計予算、第30号国民健康保険、第31号介護保険の特別会計予算について一括して反対の討論を行います。
 まず、議案第29号です。安倍内閣による国の新年度予算は、史上空前の利益を上げている大企業には減税をばらまくなど、成長に資するという名目で大企業や大資産家を応援するものとなりました。その一方で、定率減税の廃止や生活保護の削減に示されるように、国民への負担増と給付切り下げは無慈悲に継続、推進する内容となっています。これは、社会的格差と貧困をさらに拡大するものです。加えて、海外で戦争する国づくりに向けて、海外派兵専門部隊中央即応連隊の宇都宮駐屯地配置の予算化は、市民の平和と安全を脅かすものとなります。
 このような中での本市の1,643億円余の一般会計予算は、市民の暮らしを応援し、福祉を守り、市民の負担増や生活不安にしっかりとこたえるもものでなければなりません。ところが、新年度よりの敬老祝い金の再度の値切り、在宅高齢者家族介護慰労金の改悪、チャイルドシード購入補助金の廃止など、国の福祉切り捨てに輪をかけて、自治体本来の役割である福祉の心を投げ捨てるものになっています。
 例えば在宅高齢者家族介護慰労金の改悪の問題です。一昨日、介護度5の車いす生活の92歳の奥さんを介護する87歳の男性と話をしました。「毎日こうして一日じゅう向かい合って見守って暮らしている。私がほっと一息できるのは、週1回妻がデイサービスに行っているときだけです。幸い私は元気なので、老々介護で、利用料の負担もあり、何でも自分でやって暮らしている。この私に今度は介護慰労金が来なくなる。こんなべらぼうな話を一体だれが決めたのだ」と、在宅介護への家族の労苦の実態を無視した余りにもひどい切り捨てにその人は怒りをおさめることができませんでした。
 その一方で、二荒山前の2つの再開発で、大林組などのために巨額の税金を注ぎ込む予算やJR宇都宮駅東口巨大開発では、清水建設に丸投げをし、他市に負けない駅ビルの高さを要求するなど、市民の見えない密室協議で税金投入だけは膨れ上がっていこうとしています。こんな逆立ちをした予算が執行されて市民は幸せになれるのでしょうか。市民の望む都市間競争は、高いビルが並ぶ見た目ばかりがよい宇都宮づくりではありません。市民の暮らしと福祉への思いやりこそ、他都市と競い合うべきものであります
 また、採算上も、都市計画上からも、時期尚早のLRTの建設や水余りの中で湯西川ダム参画などを見直し、馬場通り中央再開発事業での保留床の買い取りとその施設整備計画は見直しを行うべきであります。例えば約10億円の税金を投入する子どもセンター、開発ビルの中の「馬場中の原っぱ」よりは、おてんとうさまのもとで大地に根差す本物の原っぱを子供たちにつくってあげたらどうでしょう。ここまで見え見えの大林組への助け船は税金の浪費であり、市民は許しません。税金のむだ遣いという点では、議員の海外視察や費用弁償による日当にかかわる予算も返上すべきです。
 宇都宮市の財政力は、中核市の中で第3位と豊かです。予算の立て方を少し変えれば市民のためにかなりのことができます。安心・安全なまちづくりのため、バリアフリー化や生活交通の確保の予算ももっとふやすこと、こども医療費の小学校6年生までの無料化、少人数学級の実現への教員配置などの予算の拡充も可能であります。
 以上、一般会計予算については、障害者自立支援法のもとでの独自支援策や包括支援センター委託費の上乗せなど、評価すべき点も多々ありますが、全体としてはとても賛成できるものではありません。
 次に、国民健康保険特別会計予算についてです。
 高過ぎる保険料、非情な保険証の取り上げ、増大する無保険者、4,700万人の国民が加入する国民健康保険は、今、土台を掘り崩すような危機に陥っています。昨年6月の時点で国民健康保険税(料)滞納は480万世帯、制裁措置で国民健康保険証を取り上げられた世帯は35万を超えました。国民健康保険証を取られ、医療費を全額負担する資格証明書に変えられた人が受診を手控えて死に至る事件も頻発しています。社会保障及び国民保健の向上を目的とし、住民に医療を保障するための制度である国民健康保険が、逆に社会的弱者を医療から排除しているのです。こんな事態は一刻も放置できません。
 本市の国民健康保険をめぐる事態はその最たるものです。国民健康保険税は中核市36市の中で一番高く、滞納世帯は22.5%、資格証明書発行は2000年度の1.8倍と激増し、2,108世帯にも及んでおります。お金の切れ目が命の切れ目の時代は私の前で既に起きているのです。「国民健康保険税の負担はもはや限界を超えている」こういう市民の声を市長も議会もしっかりと受けとめるときではないでしょうか。国民健康保険行政は自治事務であり、個別の対応は市町村の裁量にゆだねられています。一般会計からの繰り入れの増額で、せめて中核市平均となる1世帯1万5,000円の国民健康保険税の引き下げは予算化すべきです。また、申請減免制度を拡充した予算措置を行うことです。
 また、国に対し、国が国民健康保険への責任を果たし、支払い能力に見合った国民健康保険税に引き下げるために、市町村国民健康保険への国庫資金の負担水準を1984年当時の49.8%へ計画的に戻すよう強く迫るべきです。栃木県も市町村国民健康保険の困難に目をつむり、1円の財政支援も行っていないのは冷酷です。国民健康保険税引き下げのための積極的財政支援を求めるべきです。新年度のこのままの国民健康保険特別会計予算では、市民の命と健康は守り切れないと声を大にして訴えるものであります。
 次に、介護保険特別会計予算についてです。
 この間、0510月の居住費、食費の値上げに続いて、06年4月からの介護予防の推進や介護ベッドなどの利用制限など、介護サービスの抑制と削減が強行されました。これらの介護需要の拡大を無視した国の姿勢に右へ倣えをしたのが本市の新年度予算です。介護給付費について伸び率を低く押さえ込み、市民の介護サービス利用を抑制に導こうとしているのは問題であります。
 また、地域支援事業費においても、介護予防事業は政府の鳴り物入りの推進にもかかわらず、特定高齢者の実態を見誤ったがために目標値を大きく下回り、介護予防の推進の名によるサービスの切り下げだけが浮き彫りになりました。新年度予算でこれらのことに何の反省もなく、減額予算でつじつま合わせをしたのでは市民はたまったものではありません。また、リハビリの医療保険適用が180日に制限された問題では、厚生労働省は介護保険と連携し、移行すれば解決できるとしました。しかし、リハビリのできる介護施設の不足を訴える声が絶えません。
 さらに、国の介護療養病床廃止の流れの中で、平成1810月1日現在、特別養護老人ホーム入所申し込み者1,387名、要介護4、5の特養の待機者が621名に上る状況のもとで、市民の願いにこたえる施設整備予算にもなっていません。介護保険を住民が安心して暮らせる老後の命綱とするために、介護保険料、利用料の独自の減額、免除制度などの実施や国の利用抑制に抗して市民の必要な介護サービスを維持する独自の予算措置を先進自治体に学び、本市も取り組むことを強く求めるものであります。
 また、そのために、高い介護保険料でため込んだ17億円余の介護給付基金の活用を求めます。
 以上をもちまして、私の反対討論を終ります。議員各位の御賛同をよろしくお願いいたします。